Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

真夜中の青い彼方

「真夜中の青い彼方」ジョナサン・キング。

新人作家のハードボイルドなので、普段は警戒するところである。
ところが、本書の帯には「マイクル・コナリーも激賞」と書いてあった。これは、ずるいよ(苦笑)。それなら、読んでみようと。

主人公のマックスは、元警官である。
警官として、大手柄を立てて、刑事に昇進。しかし、結果を求めて事件を「処理」していき、丁寧な捜査のできないやり方にどうしてもなじめず、警官に戻る。
そこで、商店への強盗の二人組に遭遇。
拳銃を持っていた相手だった。思わず、マックスは銃を発射。相手の銃も発砲され、マックスは首もとにあわや致命傷の貫通銃創を負う。
一方、マックスの発射した弾丸は、犯人を射殺した。犯人は、まだ十台だった。マックスは悩み、負傷した警官への多額の退職補償金をもらって、フロリダにやってきた。
親しい弁護士に財産の運用を依頼し、カヌーを買って、静かな森の奥のボート小屋で隠者のような生活を始めた。
そのマックスが、ある日、川で発見したのは、誘拐された児童の死体であった。
マックスはただちに警察に通報する。
彼は、犯人の疑いをかけられるが、証拠がないことから、弁護士の尽力もあっていったん釈放される。
その彼の小屋に、何者かがGPSを置いていき、彼に犯人の疑いをかぶせようとする。そして、次の被害者が出てしまう。
マックスが事件の背景を調べると、そこにはフロリダの自然保護運動と、地元の土地開発業者との軋轢があることに気が付いた。
自然保護運動家を訪ねていったところ、そこで乗っていた軽飛行機が墜落。
マックスは、奇妙な地元の森にすむ男達に助けられる。
そこには、ベトナム戦争から帰還した「伝説の男」も混じっていた。
警察の捜査も、マックス以外の別の線を探り始め、やはり自然保護運動家たちが怪しい、ということになる。
やがて、事件は解決したかに思われたのだが、そこに再び児童誘拐が起こる。。。


森の中で孤独な生活をする、元警官という不思議な主人公であるが、これがなかなかよく描写できている。
そして、その間に、フロリダの大自然の描写がはいる。
その描写がひどくうまくて、ねっとりとした濃密なジャングルの香りが漂ってくるような錯覚に陥る。訳者が良い仕事してますねー。

ストーリーとしては、ひねったところは、何もない。
ハードボイルドであっても、ミステリーじゃないと思う。
登場人物が、なかなか魅力的なので、それで読まされてしまうのだ。
処女作としては、たしかに悪くない。

評価は☆。及第点だと思う。

2作目も、出版されているらしい。日本では、未訳のようである。
これは、たしかに、日本では受けにくい小説家もしれない。

日本人の小説家は、孤独を描くことが苦手である。ハードボイルド小説で、たとえば新宿鮫などが典型であるが、一見、主人公は孤独であるように見える。
しかし、実際は、誰かに分かってもらいたいが、しかし、やむなく孤立しているのである。
どうして、そういうことが分かるか?
それは、主人公が「一人を愛している描写」がないからである。
ほんとに孤独が好きな主人公ならば、孤独を楽しんでいる光景がないのは、おかしいだろう。
孤独を楽しむ光景がないのは、やむを得ず孤独になっているからである。日本人は、孤独が好きな人物は社会性欠格者だと決める傾向があるから。
やはり、農耕民族なんですなあ。

日本人のハードボイルド小説が、みんな半熟になっちまうのは、なんとなくわかるような気がするんですね。

ま、無人島に一人住んでる男の話じゃあ、小説にならないでしょうがね(苦笑)