Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

摘出ー黒いカルテ

「摘出ー黒いカルテ」霧村悠康。

 

研修医の本木は、乳がん患者の左右の乳房を取り違えて、正常な乳房に切開のマーキングをしてしまう。指導医もそれに気が付かず、教授の高橋もそのまま執刀してしまう。

手術中にミスに気がついたが、もうどうにもならない。教授の高橋は、そのまま乳がんの手術も行う。目が覚めた患者は、両方の乳房がなくなっていることに気がつく。

本木は、手術中に検査したところ、もう一つの乳房にもがんが見つかったので両方手術したのだと言い訳をする。患者はがんの早期発見だと思って納得する。

教授の高橋は切除した乳房を病理に回して、とにかくがんを見つけてくれと頼む。

あとづけの話だが、がんさえ見つかればミスでなく、早期発見で治療したと言い訳ができるからだ。

病理の教授はいったんは「がんは見つからなかった」と報告するが、高橋から「もっと詳しく調べてほしい」と言われて再度、細密な検査を行う。

すると、なんと1サンプルだけにがんが見つかった。

結果オーライで高橋や本木は安堵する。

しかし、なぜ1サンプルだけにがんが見つかったのか?

高橋は、教授会で医療ミスを隠蔽するために、サンプルを操作したのではないかと疑いをかけられる。

しかし、真実は意外なところに犯人がいて。。。

 

著者は実際に医者なので、手術や病理の描写が非常に詳しくてリアルである。

親戚が大きな手術を受けたこともあって、たまには医療を扱ったミステリでも読んで見るかと手に取った次第。

 

本書にも書いてあるが、素人が医療ミスを追求するのは難しい。

専門家の医師が「こうです」と説明されてしまうと、それに反駁するのはまず、できないだろう。

それに、医者には面白い文化があって、他の医者のミスを指摘するのはタブーのようなのである。「これはミスだな」と思っても黙っているのが大半だという。まあ、自分だっていつ、、、と思わないわけがないでしょうからなあ。医師も人間である。つい、忖度してしまう気持ちはわからないわけではない。

ほんとうは、大きな問題にならないだけで、医療ミスは必ず起きているはずだし、誤診はもっと多いだろう。

我々一般人は、大きな病気になったらとりあえずセカンドオピニオンを貰うぐらいのことはしたほうが良さそうである。

セカンドオピニオンだって、つい10年前は、いまほど一般的でもなかったような気がする。

最後に自分の身体を管理するのは、やっぱり自分しかいませんからねえ。