Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ヴァイオレット・アイ

「ヴァイオレット・アイ」スティーブン・ウッドワース。

ヴァイオレット・アイとは死者と交流する能力を持ち、FBIの捜査に協力する特殊能力をもった人たちである。(最近、かれらを出演させて話題になっているTV番組がありますね~)彼らの瞳が特徴的な紫であることから、このように呼ばれる。

物語は、彼ら「ヴァイオレット・アイ」が次々と殺されていく連続殺人が起こり、その犯人を追い詰めていくという流れになっている。
ヴァイオレット・アイ達は、生き残った能力者に「呼び出されて」自分が殺されたときの情景を物語るのだが、残念ながら犯人はマスクをしているため、手がかりがない。
FBI捜査官のダンは、ナタリーというヴァイオレット・アイの協力を得ながら、徐々に真相に迫っていく。

このダンという捜査官は、実は捜査の過程で、誤って無実の人を射殺してしまった過去がある。それを非常に後悔しているのだ。ナタリーは、殺された人の霊を呼出して「彼は見つからない」とウソをつく(見つからないのは昇天してしまったか転生したかで、もうすでに彼をうらんではないことを意味する)しかし、それはウソであった。
ダンは、物語後半でなんと死んでしまう!彼は、死後の世界で自分が殺した男にまともに憎悪をされているのを知る。しかし、相手の男も、ダンがどんなにその後苦しんでいたかを知る。死後の世界は肉体の区別がないので、お互いの考えが混じり合うことになっているのだ。相手の男はダンが苦しんでいたことを知り、自分を殺してしまった過ちを許すのである。

そして、ついに明らかになる犯人。彼の殺人の動機は、おそるべきものであった。。。

一言でいって、大変面白い。一気読みである。
もしも「死後」を知る人間がいて、その「死後」がどんなに暗くつまらないものであるかを知っていたとすると、人生の終着駅の最後に何が待ち受けているか知っているわけで、この世を生きることの意味を考えずにはいられないだろう。
本書にはアメリカの一般的な「キリスト教的死生観」が見事に反映されている。人は、生きることが一番素晴らしいことであり、死後の世界の唯一の望みは「復活」しかないのである。
もしもそういう死後の世界を知っていたら。。。

評価は☆☆。
日本人としては、本書の死生観はもともと違和感があるものだろうと思う。だから☆を1つ減らした。
だけど。
最近の日本人には、かえってしっくりくるのかもしれない。死後の世界を信じない人にとって「もし死後の世界があるとしたら」その世界は決して幸福ではないはずだろう。死後の世界を否定する思想の裏には「現世肯定」が必ずある。この世が最高という思想。「この世しかない」ことは「この世が最高」でなくてはならない。オンリーワンイズナンバーワン。だから現代の多くの日本人には、死後の世界を信用しない人も含めて、本書のような死生観がマッチするのではないかと思う。

もちろん、単なるお話としても、大変面白く読める。異質のミステリである。