Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

シャッターアイランド

「シャッター・アイランド」デニス・ルヘイン

この年齢になると、いったん風邪をひくと、なかなかスッキリと抜けてくれない。
多忙すぎて、休日もないのも原因でしょうなあ。

どうにか、本を読む気力がちょっと戻ってきたので、面白そうなやつを一冊。
著者のデニス・ルヘインは、前に「ミスティック・リバー」を読んで、かなり良かったので期待したのである。
本書は、映画化もされているらしい。

物語の舞台は、アメリカのボストン沖に浮かぶ通称「シャッター・アイランド」。
ここは、殺人などの重罪を犯した精神障害者を収容する島である。
外部とのつながりは、無線電話とフェリーしかない。
そこに、FBI捜査官のテディとチャックがやってくる。
一人の女性患者が姿を消した、その謎を解くためである。
ちょうどそのとき、ハリケーンが来襲し、フェリーも無線電話も途絶。島は、脱出不可能の密室となる。
どこにも逃げ場がない島なのに、どうして女性患者は消えたのか?まったく不可能である。
ところが、さらに驚くべきことに、捜査を続けているうち、消えた女性患者が戻ってきてしまった。
いったい、彼女はどこに隠れていたのか?
テディは、第二次大戦中に暗号兵をやっており、暗号に詳しかったが、そこで発見された暗号文を解読すると、数字「67」が現れる。
おかしなことに、患者は66人しかいないはずである。
いったい、どこに67人目の患者はいるのか?
そして、テディの過去が明らかになっていく。彼の愛妻ドロレスは殺されていたのである。
この島に、その犯人、アンドルー・レディスがいるのではないか?

こうして、島に滞在する4日間。ついに最終日の4日目に、すべての謎は解かれることになる。

評価は☆☆☆。
いやー、面白いんじゃないの!

結論から言えば、叙述トリックということになるのだが、騙された感は少ない。
入念な伏線、思わせぶりな暗号、人物の名前、すべてが結論を示している。フェアな作品である。
しかし、そういうトリックよりも、本書のテーマはやはり「喪失した記憶」だろう。
失われた過去を取り戻すために、人はどれだけ傷ましい努力をつづけるものか。
それを深く感じる作品になっているのである。

映画は未見であるが、私は、この作品を映画で見ようとは思わないなあ。
こんなに素晴らしい小説があるんだから、余計な映像はいらない。
しばらくは、この密かな余韻を、誰にも邪魔されずに、味わっていたいのである。