Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

不動産は値下がりする

「不動産は値下がりする」江副浩正

リクルート創業者の江副氏による書である。いろんな意味で興味があって読んだ。

まず、地価の先行きについて、江副氏は実にシンプルな原則を打ち立てる。つまり「物価は需給関係で決まるもので、不動産だけが例外ではない」ということである。

さて、その「需給」を見た場合、いったいどうなるだろうか?

1)不動産の供給は増えている。
物理的な例として、神戸市があげられている。山を削り、その土で埋め立てを行いポートアイランドをつくった。山と海が、両方平地に変わってしまった。
そのほかの要因として、規制緩和がある。容積率や建坪率の緩和、斜線規制の緩和、また農地転用についても簡単になった。これらを総合すれば、不動産供給は増えていると言える。「土地は生産できない」は、既に誤りである。

2)不動産需要は既にピークを超した
今までの旺盛な不動産需要を支えてきたのは、住宅取得の公的補助とJ-REITをはじめとする不動産の債権化(流動化)である。しかし、米国のサブプライムローン問題に見られるように、この手法は限界にきている。日本もすでにピークアウトの傾向にある。これは、J-REIT先物価格を見ていればわかる。先物の下げは、必ず現物の下げにつながる。また、ワンルーム販売の鈍化、空室率がジリジリとあげてきていることも傾向としてある。

3)金利引き上げ傾向にあること
日本の財政構造をみたとき、長期的には利上げが避けられない。そうでなければ、日本の資産の海外流出が止まらず、ついには円が毀損する結果となるので、日銀は長期的に利上げをするだろう。
地価と利率の相関関係から、必ず利上げは地価の下げを生む。

以上から、日本の不動産の値下がりは下げられないのではないか。既に現在の地価自体がバブルの要素をはらんでいる。。。

評価は☆☆。なかなか、示唆に富む本である。

本書にも指摘があるが、日本の財政は既に沈没寸前である。日本の財政再建は、すでに円防衛と同じレベルに入っている。国と公共団体の借金は税収の20倍に及ぶ水準で、これは日本の敗戦時と同じレベルである。
さて、敗戦のとき、何が起きたか?それは、猛烈なインフレであった。国は、国債を紙くず同然にするしか方法がなくなったからである。その昔、大卒者の給料が2万円といった。それを学士様と言われていたのである。高度経済成長で、国民の所得倍増がいわれたが、あれは通貨敗戦からの復興だったわけである。

余談だが。
安倍政権の経済政策は、決して悪くはなかった。企業業績は拡大しているが、これは日本→中国→米国という「迂回輸出」で潤った分野に限られる。この流れに乗れない中小企業には、非常に厳しい状況となったが、これは主に製造業が空洞化したことによるもので、政権の経済運営の問題とは異なるように思われる。一方で、今の中国が米国から貿易摩擦で批判されているのを見れば、かつての日本と同じ構造に陥っているのがわかるだろう。政治レベルでは、まずまずうまくやってきた(小泉政権も含めて)というべきじゃないかな。

たとえば、日払い派遣で働くネットカフェ難民が格差拡大の象徴のように言われたが、昔からドヤに住み手配師の世話で働く日雇い労働者はいたわけである。日本の産業構造が変わり、建設業が基幹産業の座からすべりおち、そういう労働者はひどく少なくなった。その部分が、ほかの産業にうつっただけとも言える。ネットカフェ難民を騒ぐのであれば、かつて同じようにマスコミは山谷やあいりん地区に住む労働者のために時の政権批判をしたかどうか、問われなければならないだろうと思う。

私の記憶では、後期の批判はほとんど「任命責任」だけだったけどね。これだけ「任命責任」一点で退陣まで追い込まれた政権はなかったように思う。

次の総理がどうなるかわからないし、なんだか自民党最期の総理になってしまうような気がしないでもない。誰がやるにせよ、どの党がやるにせよ、たった一つハッキリしていることは、このままでは日本は沈むという一点なのである。
今の総理は地獄のような仕事なのだと思うが、なんとかこらえていただきたいと、切に願っている。