Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

23年目に思う

あの尾巣鷹の悲劇から、もう23年が経つそうである。
つまり、あのとき生まれた赤ん坊は、今や大学を卒業して立派な社会人となっているわけである。月日の経つのは早いものだと思う。

私は、パニック障害を発症してから、どうも飛行機が苦手なのだが、その要因のなかには尾巣鷹の悲劇も影響しているのに違いない。
全国があまりの惨劇に言葉を失ったものだ。

500名が瞬時に命を失うという事故のすさまじさの裏には、そもそも発動機で空を飛ぶということ自体の危うさがあると思う。飛行機が発明されたときに、あるフランス人科学者が自信たっぷりにこう言ってのけたそうである。
「空気より重いモノが、空を飛ぶわけがない」
もちろん、彼の名誉のために、その名は伝わっていないのだが、しかし、この言葉には一片の真実がある。石油の力で空を飛ぶのは、どうしてたって一種の「錬金術」には違いないのだろう。その術が敗れたとき、我々は「空気より重いモノは空を飛べない」という事実をつきつけられてしまうのだ。

思えば、自動車だってそうである。石油の力で、時速100キロの速度で走る。魔術である。魔術にはムリがある。
今や、自動車の年間死者数は減少して、6000人を切った。
これは
・救急医療技術の発達により、24時間以内の死亡が減少した(警察の統計では24時間以内の死亡だけがカウント対象である)
エアバッグやシートベルトの普及による死亡事故の減少
・衝突安全性基準の向上による、自動車の損壊の減少
などが影響している。

しかし一方で、自動車は「自動車に乗っている人」を守る方向に進化しているが、その他の人々は守らないのが事実である。メーカーにとっては、自動車の乗り手=多くは顧客が大事であって、通行人は大事ではないのである。エアバッグは、ダッシュボードに装備されているが、バンパーには装備されないものだ。

衝突安全性の問題のために、自動車の車格は大きくなった。狭い日本の道路で、横幅が10センチ増えたクルマがあふれている。だから、自転車は車道通行が怖くて仕方がない。自転車事故の増大には、自転車の交通法規を守らない乗り手側の問題が大きいが、一方で自動車ばかり車格が大きくなることを許容してきた道路行政にも問題がある。
あふれた自転車が歩道を走行するので、今度は歩道の老人や子供が事故に遭うことになる。

どこかで、ムリは必ず出る。術は必ず敗れるのである。

ドイツでは、主要都市内では、片側1車線をつぶして自転車専用道にしたところが多い。すると、市内n道路は至る所で一方通行になる。1車線しかないのだから当然である。
クルマを不便にしてしまえば、おのずとクルマに乗る人は減る。おかげで、空気はきれいになったそうである。当たり前だ。
都市は、もともと便利なのである。際限なく「便利」を要求していけば、ついに必ず悲劇が起こる。

なんとなく23年目の夏に考えたことである。