Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

シャドー81

「シャドー81」ルシアン・ネイハム

この作者は、この作品しかない、ようである。その作品が、奇跡的な名作。
一時期のダニエル・キイスみたいなもんですな。「アルジャーノン」だけのほうが良かった。後のネタは、正直使い回しじゃん。
などと。余計な話ですなあ。

で、この小説であるが。
ベトナム戦争の末期に、最新鋭戦闘爆撃機TX-75Eが行方不明になる。当然、この機体はベトコンに撃墜されたと思われた。
しかし、実際は、パイロットは巧妙に不時着し、機体を隠匿したのである。
そして、ある日、この機体は無人島から離陸、ロサンゼルス空港から飛び立ったボーイング747ジャンボジェットの背後にピタリとつく。
「身代金の金塊を用意せよ、さもなくばジャンボジェットを撃墜する」というわけである。
ジャンボジェットには、大統領選挙の対立候補が乗っており、現職の大統領は政敵をハイジャックにかこつけて撃墜させるわけにいかず、言うなりに金塊を提供することを決意する。
そして、犯人は、意外な方法で、身代金を手に入れるのだった。
そして、ハイジャックパイロットを、背後で操っていた意外な人物とは。。。

ううむ、たしかに名作である。
まず、戦闘機によるハイジャックという意外なシチュエーション。それを可能にした、細密な作戦。
莫大な金塊による身代金奪取の意外な作戦。そして、本当の黒幕が明かされるラスト近くの驚き。
ハードボイルドとして、あるいは冒険小説として、たいへん上質な作品。翻訳発表当時(77年)激賞だったのはむべなるかな、という出来映えである。

評価は☆。たいへん練り込まれたストーリイと、登場人物の思惑のくだらなさ(言いにくいことだが。。。)も光る。
最後の結末も、結局悪が栄えてしまうわけで、或る意味で、作者は相当なマキャベリストだったのだろうと思う。
だから、作品を量産できなかったのではないだろうか。
あまりに「現実的」な人物は、小説家には向かないんじゃないか、と思うのである。

面白い小説だが、それだけと言えばそれだけ。意外な場面設定だけど、現実的すぎるのだ。
ま、それで良いといえば、たしかにそれで良いのであるけれどもね。
秋の夜長に、眠らず熱中したい人にはおすすめしたい。