Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

センセイの鞄

センセイの鞄」漫画谷口ジロー。原作は川上浩美である。
 
主人公のツキコさんは、未婚で37歳の女性OLである。
別に仕事に燃えていたとか、男性と付き合っていなかったわけでもないのだが、なんとなくその歳まで独身できてしまった。
そんな彼女の楽しみは、近所の地味だけど美味そうな居酒屋で一杯やることである。
その居酒屋で、彼女は久しぶりにセンセイと会う。
高校時代の恩師であり、すでに70歳を超えている。
彼女には、高校時代に、センセイに習った国語の時間の記憶がほとんどない。ただ「センセイ」とだけ覚えている。
そのうち、よく二人はこの居酒屋でカウンターに並び、気の置けない会話を交わすようになる。
そんな穏やかな日々が続いたある日、ツキコさんは高校時代の同級生の男に会う。
男は、結婚に失敗している。かつて、ツキコさんが恋心を抱いた相手でもある。
ときどき男と会うようになったツキコさんは、ある日男から、二人で旅行に行こうと誘われる。
センセイとなんとなく疎遠になっていたツキコさんは迷うのだが、センセイにばったり居酒屋で出会って、自分が男との旅行を望んでいないことに気づいてしまう。
ツキコさんはセンセイに告白する。センセイは大人だから、たしなめる。
しかし、事態は、そこから急速に動き始める。。。
 
原作は谷崎潤一郎賞をとった作品だそうだ。
しかし、私は、漫画だけを読んだ。谷口ジローが好きであり、かつ、川上という女性作家をよく知らないから。
私は、生理的にどうも女性作家がダメなのである。
女性の矛盾を並立して捉えられる能力が、私には欠けているからだ。これはこう、あれはこう、だからこれとこれはこう、そんな風に私は考えてしまう。
すぐれた女性作家の「だから」は容易に見えないが、突如、姿を現す。そのとき、私は置き去りにされてとまどうのだ。
率直にいって苦手である。
言うまでもないが、私は、基本的に女性が苦手なのである。たぶん、本質的に女嫌いなのですな。
だからといって、男が好きなわけじゃありませんが(苦笑)
谷口ジローは、その苦手な女性の小説を、丹念な線で絵にしてみせる。淡々とすすむ、年の離れた男女の恋愛という物語を見せる。
ただ、おそらく、谷口ジローは男性だから、男の気持ちがよく分かる。谷口ジローの描くセンセイの気持ちは、同じ男として、容易に推察できる。そういうふうに、ちゃんと漫画が描いてある。
 
評価は☆☆。
素晴らしい作品である。漫画が文学だとは言わないが、文学に達した漫画は確かにあって、それは小説とは違う次元で存在している。
映画が苦手な私は、ストーリーの進展速度についていけないのだが、漫画ならゆっくりと熟読玩味できるのだ。
ありがたいことである。
ところで、ツキコさんとセンセイの年齢は、だいたい30以上も離れている。
私に置き換えて考えると、女子大生どころか、女子高生と恋愛するくらいの話になる。
それはムリである。趣味の問題ではなくて、相手もイヤだろうと思うが(苦笑)こっちも会話が通じない相手と付き合うのでは大変だろう。
この種の話は、やっぱりフィクションであるのだ。
大人相手の童話、ということである。
リアリティだの、私小説だの、そんなものめんどくさいだけだ、と喝破した大人にこそ勧めたい一冊、というところである。
現実は、もっと残酷で、辛いモノであるからだ。
小説だの漫画だの、せめてそれくらいは、おとぎ話でいいんだろうね。