Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

リフレはヤバい

「リフレはヤバい」小幡績

春闘のベアは久しぶりに満額回答が並び、株もいまや2万円の壁の突破がまじか。
さて、巷間はさぞ好景気に沸いているかと思いきや、どうも、そうではない気がする。
もっとも簡単に景気を見られるのは、飲食店である。どこの店も、いまや大苦戦。マクドナルドだけじゃあない。
雑誌などには「持ち帰り総菜やコンビニ等の中食との競合」などと、もっともらしく書かれているが、つまりは皆の財布の紐が固いわけである。
なあに、そのうち、カネが回りだすよ、というのが政府の考えだろうと思うのですが、はてさて、どうなることやら。

本書は、アベノミクス3本の矢の第一「異次元の金融緩和」を批判した本である。
アベノミクスの金融緩和は、日銀の従来の量的緩和の枠を出て、さらに「2%の物価上昇」を日銀が具体的に目標に掲げた点に特色がある。
予想外の原油安などの影響もあり、2%は未達に終わりそうであるが、ともかく「インタゲ」つまりインフレ目標を掲げた、という意味で画期的なのだ。
通常は、中央銀行はインフレ抑制をするのが仕事だからである。

著者は、そもそも日本がデフレに陥っていたのは需要不足だからであって、仮にインフレになったとしても、買いたいものを慌てて買う、という行動にはならないだろう、という。
値上がりするから、今のうちに買うというのは、買いたいものがあっての話である。
さらに、実質賃金の低下の問題がある。
通常、物価上昇に比べて、賃金上昇は遅い。つまり、賃金は目減りしてしまうわけで、買い物を減らさなければならないことになる。そんなときに、慌てて「欲しいもの」を買うだろうか?というのである。
おそらく、逆に賃金の目減りを嫌気して、消費行動を抑えるのではないか?すると、仮に金が余ったとして、その金は消費ではなくて資産に向かうのである。
よって、土地や株の値段だけが上がり、実体経済はよくならない(バブルの発生)。
バブルは、それが崩壊するときに、もっと悪影響を与えるので、好ましくないだろう。

著者は、そもそも2%のインフレ目標は、倒立した論理だと指摘する。
たしかに景気が良い時には、2%程度のインフレになることが多い。しかし、それは結果論である。そもそも、景気が悪いのに、2%のインフレにしたから景気が良くなるはずはない。
「景気が悪くてデフレ」だったものが「景気が悪くてインフレ」になるだけである。
確かに物価は上がるが、それはコストプッシュ型インフレであり、通貨が安くなった結果によって輸入コストがあがり、その転嫁が価格に反映しただけである。
デマンドプル型、つまり「値上げしても売れるので、それなら値上げして利益を得たほうが良い」インフレではないのである。
むしろ、コストプッシュで「仕方なく」価格を上げるが、実質賃金は増えていないので、購入点数は減る。物価が上がって、モノが売れなくなる。インフレで景気が悪い「スタグフレーション」に陥るだけだ。。。


評価は☆。
きわめて分かりやすい内容の本である。
しかし、本書の内容が正しいのかどうか、正直なところ、私には正確に判断をする力がない。

そもそも、学者の中にも「リフレ派」「反リフレ派」がいるわけである。
どうして、経済学の正規教育を受けていない私に、内容の当否がわかるだろうか?
無理でしょ?(笑)

経済学も、いろんなことを言うが、面白いのはどいつもこいつも、すべて「私が正しい」と主張してやまないことである。
そして、その正しい人のご託宣が、よく外れるわけである。
すると、彼らは堂々と主張するのだ。外れた理由を、である(笑)。
まあ、数学的な単純化モデルと実際は違うとは、変数が多いとか、いろんなことを言うのだが、つまるところは「私の理論は間違っていない」のである。
どう考えても理論が間違っていないのだから、現実が間違っていることになる。

さて、いろんな学問があるが、いわゆるドグマ(相対性理論は間違っている!とかいうトンデモさん)を別にすると、正常な人が「現実が間違っており、理論は正しい」と主張する学問が1つだけある。
それは、神学である。
経済学は、神学のようなものである。
学問でないとは言わないが、まあ、「その中の人」でないと、その高邁な理論についていくことは難しい。

とすると、このような巷間にあふれる経済学の本を、どのように読めばいいのであるか?
簡単である。「ネタ」として、楽しむのである。消費するとは、そういうことである。
ちまたにあふれる経済本は、そういう意味で、充分に楽しく「ネタ」になる。
そう、下手な理論よりも、こういう本のほうが、実際の経済の「消費拡大」に協力しているわけだ。素晴らしい!

だから、経済本は、どんどん読んでネタにするに限るわけである。お互い、消費の拡大に励もうではありませんか(苦笑)。