Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?~世界一わかりやすい経済の本

「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?~世界一わかりやすい経済の本。細野真宏。

年金問題も「ミスター年金」長妻氏でもどうにもならないことがわかったので、すっかり国民は興ざめしているところだと思うが、問題は何も解決していないわけである。
それどころか、最近はいよいよ「支給開始年齢の引き上げ」がささやかれる始末。もっとも、単に「安全運転」だけが身上のどじょう内閣に、こんな英断(笑)ができようはずもなく、結局先送りとなった。文句を言われようと「三方一両損」を貫いた小泉内閣以後は、何も変わっていないのが現状だ。

ところで、本書によれば、年金はいかに未納者が増えても破綻しないのである。
そもそも、未納が問題になるのは国民年金だけで、厚生年金はサラリーマンの場合、給料天引きであるから、未納は起こらない。
国民年金の未納者は、年金全体でみれば5%以下であり、かつ、この人たちには年金を支給しなくて良いのだから、年金財政に影響が出るわけがないのだ。
本書に紹介のある「100年安心年金プラン」なのだから、未納がいくら増えようが、年金は破綻しない。

それでは、なぜ、本書にあるとおり「いくら未納が増えようとも、年金は破綻しない」のに「支給開始年齢の引き上げ」が議論されるのだろうか?
この謎は、いくら本書を読んでもわからない。当たり前であって、計算の根拠が示されていないのである。
一言で説明すると、「100年安心」のときの「想定の範囲外」の経済状況が起こってしまった、ということだ。
その正体は「デフレ不況」である。

本書に紹介のあるとおり、小泉内閣における年金改革は以下の3点であった。(2004年)
(1)基礎年金の国庫負担を1/3から1/2に引き上げ。
(2)保険料報酬費を18.3%に引き上げ。
(3)支給開始年齢を60歳から65歳に引き上げ。

このときのモデルプランに対する検証の直近は2009年の財政検証で行われたが、まったく問題がなかったことになっている(本書のとおり)。
ところがである。2009年の財政検証で予測された2010年度の年金財政(つまり予測の初年度だ)から、もうすでに大きな乖離が発生しているのだ。
2009年度財政検証では
2010年 (2009年予測) 収入合計 35兆円 支出合計 36.7兆円 増減マイナス1.7兆円 残高142.6兆円
のはずが、実際の残高は121.2兆円。その差、実に21兆円である。
年金財政はどんどん悪化しており、100年どころか、このままでは5~6年で破綻である。
こんな業績予想を上場企業が発表したら、社長以下役員のクビは飛ぶ。株主総会でコップをなげつけられるくらいではすまない。
官僚とは、つくづくうらやましい商売ですなあ。

この原因はデフレ不況である。
2009年時点での、物価上昇率予想が1%、名目賃金上昇率が2.5%、そして名目運用利回りが4.1%の想定だった。
名目運用利回りからインフレ分の1%を差し引くと3.1%だが、ご存知のとおり、年金の掛け金は賃金額面に対してかけられるのだから、2.5%の名目上昇であれば、実際には年金収入の2/3は2.5%で上昇するのだから、この部分はプラス。全体で考えると、実質で2.5%程度の運用ができれば大丈夫というのであろう。
これが、ふたを開けたら物価上昇がマイナス1%以上ある。賃金も減るわけで、さらに運用成績も上がらない。平均名目運用利率は5年間で1%ちょっとだから、実質は2%以上あると思っていいのだが、とにかく残高が減り続けるわけだから、次年度以降はお先まっくらになってしまった。
給付水準を引き下げるよりほかに方法がなく、そこで額面ではなくて「支給開始年齢の引き上げ」という姑息な手段がまた用いられようとしている。
厚生官僚に言わせれば「想定外でした」となるのだろうが、、、それを想定するのがお前らの仕事だろ?!というのが国民の普通の感情であろう。
東電といい勝負の無責任体質ではないか。

というわけで、評価は☆。
できれば、続編を望みたい。

タイトルは
「未納が増えても年金は破綻しない」はずなのに、なんで破綻寸前なのか?

どうでしょうか(苦笑)