Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

信長の棺


本能寺の変のあと、信長の遺体が見つからなかったことは良く知られている。
明智は必死に捜索したが、見つからなかった。さして広い敷地でもないのに、なぜだろうか?
さらに、そもそも、本能寺の変の下手人は明智だが、裏で糸を引いたものはいるのか?それはだれか?

ま、歴史好きであれば、このあたりの疑問は「定番」なのである。
どちらかといえば「耳たこ」であろう。
その「耳たこ」を、「こうでしょ、こうでしょ」と丁寧にほぐしていくのが本書。
そういう意味では、すれっからしの歴史好き向きであって、この種の本を読みつけない人には抵抗があると思う。

小説としての出来は、まずまずだと思う。
主人公は太田牛一。あの「信長記」の著者である。
その牛一が、信長が本能寺で襲われる直前に、3つの箱を預かる。
その箱の中身は何か?そして、信長が襲われた経緯と、その遺体の行方が、牛一の地道な捜査によって徐々に明らかになっていく。
結論は「ふうむ、、、なるほど」と思える程度には、説得力がある。

評価は☆。
遅咲きの作家として、これだけの作品を書きえたことは称賛してよい。
ネットの書評には「70過ぎの爺に、若い女忍びが恋するわけがねえだろう」という揶揄も見受けられるが、まあまあ、とうことで(苦笑)。
いいじゃないの、小説なんだしさ。
多少のサービスってことだろう。

本書は、あの小泉元首相が愛読書にあげていたので有名になった。
とはいえ、改革や政策について、牛一が何か意見を開陳するわけでもないし、信長はとっくに故人で同様である。
綿密に練られたストーリーがそろそろと動き出す、その流れを元首相は好ましいとされただけのことであろうと思う。

個人的な見解だが、本能寺事件の裏の主役は、やはり朝廷ではないかと思うのだ。
この説は、近年唱えられだしたものだが、戦後はあまり顧みられなかった。
だって「朝廷」が、そんなに権威を持ったのは、明治政府の創作で、それ以前は朝廷など、誰も知らなかったというのが定説だったからだ。
そうではなく、朝廷は有力武将を充分に使嗾できる力があったとしたら、謎はきれいにとけてしまう。

もしもあのまま、信長が長命を保ったら、、、きっと、日本はずいぶん違った国になっていたんでしょうなあ。