Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

SEの不思議な生態

「SEの不思議な生態」きたみりゅうじ

IT業界というやつは、構造的には建設業と似ている。
元請けがあり、設計事務所があって、現場監督がいて、現場があって、監理がいるわけである。
SEというのは、だいたい設計事務所に所属することが多いけど、中小案件だと現場監督やりながら現場もこなす。

で、この種の仕事には、常にリスクが付きまとう。
納期短縮、仕様変更、このくらいはデフォルト(笑)
使えないPGがたくさん、唯一の使えるメンバーが突然引き継ぎもなしで退職、バグ多発、対処のため延長、徹夜連発、でもお金はもらえず、最悪は裁判して負け、、、、である(泣)
私も、さんざんそんな業界で生きてきた。
ついには鬱になったりもしたけど、その程度、この業界じゃあ掃いて捨てるほどもいる。誰も珍しがっちゃくれないんである。

そんな業界の悲話を、自虐の奇妙に明るいイラストとともに紹介したのが本書。
笑えないのは、たぶん、業界で採用を担当している人だろう。
ここまでばらされると、都合が悪いだろうからね(苦笑)

自虐ぶりが軽くて面白い。
経験8年で営業への転向を打診された著者は、たぶんSEとしての出来はフツーだった。
少なくとも、抜きんでてはいなかった。
だからこそ、面白いんである。
まれに、スーパープログラマーといわれる人種がいる。
洗練された卓抜なアイディアのソフトウェア仕様を考え付き、自分でバリバリとコーディングしてしまう。
ちょっと見ただけではよく理解できない、妙にあっさりとした、しかしエレガントな構造のコード。
そして、たまに出てくる、目もくらむアクロバティックな処理。
まるで魔法使いである。
だが、そんな人は、100人に一人もいない。ほとんどが、習い覚えた枯れたコードを何度も書いて飯のタネにしているのだ。

評価は☆。
そんな、定番の業界自虐ネタ本として。

SEをやっていると、システムの素人とプロの間を埋めることの大変さはよく理解できる。
だが、どんなシステムでも「じゃあ、素人は黙っていろ」といって、良いものができたためしはない。
プロに任せておけばよいものができるか?嘘である。
良いものができなきゃプロではないというなら、全員がアマチュアである。
私に言わせれば、本当のプロならば、システムのカットオフまでのバグやアーキテクチャ上の問題点、稼働後に出てくる問題点まで全部予言しろよ。
だってプロなんだろ(笑)
実際には、そんなことはない。できやしないのだ。

本当のプロは、ユーザーが訴える、わずかなヒント、素朴な疑問から、真の問題点を発見する。
そうして、その対処を考えておく。それだけで精いっぱいだ。
それでも、予想外の事態はいつも起こる。仕事は常に予想外の連続である。
すべて予想できたとしたら、そもそも、それは仕事のうちに入らないよ。

原発事故で、たくさんの「専門家」の過去の発言をみた。
事故は起こらない、確率は天文学的だ、起こったとしても放射能が漏れることはありません。。。
こんな「専門家」を、私はプロとは思わない。
そんなことをいうSEが来たら、そいつに絶対仕事は任せない。
必ずエラーが起こる、バグは出る、見落としがあるとわきまえていない奴を、どうして使えるもんか。

そんな「絶対安全」などと抜かすアマチュアばかりを起用してきた業界の構造そのものが、本当の問題点なんだと私は思っている。
あんなバグがありました、こんなエラーがありました、そんなこたあどうでもいい。
それがわからないんじゃ、またプロジェクトはトラブるよ、と思うのですがねえ。