Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

沈黙の森

「沈黙の森」C・J・ボックス。

主人公はワイオミング州の猟区管理官。禁漁期間の密漁の取り締まりをしたり、自然保護をしたりする仕事である。
いわゆる公務員にあたるわけだ。
主人公は、うっかり密漁中の人物を逮捕したら、それが就任したばかりの副知事だったという伝説を持ち、面接の日を1日勘違いした挙句に、先輩の管理官がとりなしてくれてようやく就職できたというドジである。
しかし、彼は純朴、無口で善良な男なのだ。こういう「無口で善良、しかし家族を愛するいざとなったらタフガイ」というのは、そりゃあもうアメリカ人が一番好むタイプのヒーローなのである(笑)

彼の二人の子供は、庭先で奇妙なかわいい動物を見つけ、彼らに名前をつけて餌を与える。
一方、妻は3人目の子供を妊娠。
猟区管理官は安月給なので、主人公のジョーは悩む。
そこに、先輩管理官からうまい話が舞い込む。この地域にパイプラインが敷設されることになり、その会社で求人がある、給料は倍になるという。
ジョーは、素直に喜ぶ妻の顔を見ながら、しかし、心が決められない。

そこで、ジョーとちょっとしたいざこざがあった男が、ジョーの自宅の裏山で死体となって発見される。他殺ではないかと疑われるが、誰が何の目的なのかわからない。
捜査が進んでいき、キャンプ地で、変わり者として知られている男が射殺される。キャンプ地からは、多数の遺留品が出て、ジョーの裏山で死んだ男を殺した犯人だということになる。
しかし、この結論に納得しないジョーは、瀕死の男に会いに行き、事件の真相を聞き出す。
一方、ジョーの娘のシェリダンは、先輩管理官から脅迫を受けていた。
見たものを話せば殺す、というのだ。
その彼女の見たものとは、事件の真相と、例の不思議な生物のことであった。
ジョーは、やがて事件を真相を突き止め、意外な犯人と自分の先輩と対決することになる。

まるで開拓時代の西部劇を見ているような話である。
古きよきアメリカの良心というやつか。
評価は☆☆。
なかなか面白い話である。

この事件の真相だが、ある希少動物が絶滅していたものが、実は生きていたことが原因になっている。
そうなると、どうなるであろうか?
当然、一帯は野生生物の保護区になる。そうなれば、パイプライン計画は中止である。
すると、多くの失業者が出る。地域の経済は打撃を受け、町は不況になる。
そこで、その希少生物をみた人間は、彼らを皆殺しにしようとするわけである。

日本で、もしニホンオオカミニホンカワウソが発見されたらどうであろう?
そこに、電源三法に基づく原発計画があったらどうなるか?
地元の補助金も、雇用もみんなパアである。
「カワウソと人間とどちらが大事なのか」という議論になれば、カワウソが駆除されることはあり得る。
自然保護は、長期で見れば人間のためなのだが、短期で見るとまったくの矛盾だからだ。
世の中の意見の相違は、多く、その「問題のスパン」のとらえ方で違うだけのように思われる。
私が最近感じているのは、日本人は短期スパンの計算は得意だが、長期スパンが苦手(もしくはない)ということである。
「死んだあとのことまで心配してられっか」そりゃまあそうなんだけれどもね。