Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

チェイシング・リリー

「チェイシング・リリー」マイクル・コナリー

主人公のピアスは、大学でハッカー事件を起こして中退。そのまま分子生物学の道に入り、いまやバイオ・ベンチャー(分子コンピュータ)の代表である。
彼は、同社で長く一緒に働いていた恋人と別れたのをきっかけに、新しいアパートメントに引っ越す。電話番号も変わったわけだが、その番号に頻繁に間違い電話がかかってくる。
その番号の元の持ち主は、リリーという名前のエスコート・クラブの女性(早い話が売春婦)であった。普通なら電話番号を変更しておしまいであるが、ピアスはなぜか、彼女に興味を持つ。ホームページで彼女の紹介をみつけ、そこからリリー本人に迫っていく。彼女とペアを組んでいた同業の女性に会った後、彼は二人組みの男に「警告」としてアパートメントの壁からつるされて殴打されるという目にあう。
さらに状況は悪化し、ピアスは警察にリリー殺しの犯人ではないか、と疑われる。
やがて、ピアスは、事件の「真犯人」に気がつく。。。

いわゆる「追跡譚」であるが、読みすすめていくうち、非常な「違和感」にとらわれる。主人公がリリー探しにかける情熱が常軌を逸しているからだ。
たしかに、身の回りに行方不明になった女性がいれば、調べてみようと思うかもしれない。しかし、である。その女性が、一面識もなく、単に「元の電話番号の持ち主」であっただけならどうか?危険を犯しつつ、真相を究明しようという気にならないものだろう。

物語はラストに向かって、このピアスの「動機」を明らかにする。彼が、偏執的な情熱を抱くわけが、幼いころになくした姉の問題と絡んでいることが明らかになる。
だけど、である。
同様の体験をもつわけでもない読者としては、なかなか共感がむつかしい。筋立てとしてはわかりつつ、やっぱり異常な経験をした人間の異常な物語、という感じを否めないのだな。

そういうわけで、評価は☆。
読んでいるときは「それなり」なんだけどさ。
本作で、あのジェイムズ・エルロイとの共通点を探すのは無理じゃないかと思うな。

そういえば。
最近の話だが、なんと特急電車の社内で強姦事件があった。周囲の乗客はみな見て見ぬ振りをしたというので、世論は憤慨しているわけだ。
もちろん、それはそうだとは思うけど。しかし、はっきりいえば「自分さえよければいい」という憲法の下で育った国民として、正常な反応なんじゃないか、とも思うのである。外国がどんなに困っていようと「武力」はイケナイのであって、だからみんな「非武装中立」したんじゃないかな(笑)

そんな国では「よけいな親切」の物語にイマイチ共感できないのも仕方ない、、、なんていっちゃあおしまい、かなぁ。
そう思うのは、やっぱり主人公に魅力が足りないからなんだろう。人並みはずれた親切を描くには、人並みはずれた魅力の主人公じゃなくちゃ、と思うのである。