Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

プロ交渉人

「プロ交渉人」諸星裕。副題は「世界は交渉で動く」である。

著者は、子どもの頃から英語のジャズやポップスの歌で英語を身に着けたのだという。
ネイティブ並の英語力を武器に、一方で「レジャー」を研究し、ひょんなきっかけからオリンピックファミリーになった。
つまり、オリンピックの中継やら取材場所やらの割り振りで、交渉するメンバーである。

面白いのは、交渉にもお国柄があることだそうである。
英米は、基本的に論理を重んじる。あからさまに利で釣ると、自尊心を傷つけることになりかねない。
ロシア人は、とにかく何を考えているかわからないのだという。
そして、とにかく交渉の金額を釣り上げ、譲歩すればするほど攻め込んでくる交渉をするのが、支那人と韓国人なのだそうである。
ああ、やっぱりねえ(苦笑)。

日韓ワールドカップ共催のときの裏話も書かれている。
下馬評では、あきらかに日本優勢であった。
日本と韓国、どちらでワールドカップをやれば、よりスポンサーがついて儲かるか?これは火を見るよりも明らかである。
ところが、韓国の招聘委員会の会長(ヒュンダイ自動車の会長でもある)は、とにかくストレートに利で釣る。
それで南米とかアフリカの票を買うわけである。
自家用ヨットに美女サービスつき、なんてのを貰った理事までいたという。
しかし、このやり方は、英米の委員には通じない。したがって、彼らは日本側につく。
すると、韓国側は、サマランチ会長を抱き込んだ。事務局長経由で「日韓共同開催案」を押し込んできたのである。
さて、そのとき、プロ交渉人はどう見たか?

あくまで「共同開催拒否、単独開催」を主張すれば、票は割れる。割れるが、勝てたであろう、という。
しかし、日本側は「もしも負けたら」が先に立った。
よって「共同開催が提案された場合は、同意する」と回答してしまう。

著者は言う。「プロ交渉人は、交渉を請け負うが、その上の政治判断には口を差し挟むべきではない」
その通りである。それがプロである。
しかし、日本は、落選の危機を冒すべきだったのではないか。
リスクを取れなかった弱腰は、きっと見透かされているだろう。
一譲れば、十を求める国だって、世の中にはあるんだぞ。

評価は☆。
かなり面白い。

私自身は、とても交渉が苦手である。
恫喝、なだめすかし、腹芸、、、みんなダメである。
小市民で、度胸がないのだ。すぐに我を見失ってしまう。
よく、こんな小さい人間がいるもんだ、と我ながら情けないのである。

交渉に強いタフな男に、なれるもんなら、なってみたい。
ま、不眠症やらパニック障害やらで、クスリをお世話になるような男じゃ、先行きは難しいですなあ(泣)