Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

世界経済はこう変わる

「世界経済はこう変わる」小幡績、神谷秀樹。

対談本で新書である。まあ、安直な企画である(苦笑)。
「すべての経済はバブルに通じる」と喝破した気鋭の経済学者、小幡氏と、現役金融マンの神谷氏の対談。

リーマンショックの結論として、早い話が「アメリカ主導の経済はぶっ壊れて、もうもとには戻りません」という指摘。
まあ、これはわかる。
で「EUも、アメリカ以上に惨憺たる有様で、受け皿にならない」
「日本の政治能力のなさは世界にばれまくっているので、これもない」
中共人民元は、まだまだ基軸通貨なんて夢の話」
というわけで、五里霧中になってしまう。
仕方がないので、多極化をたどりつつ、次の基軸をさがすんでしょう、という話である。

リーマンショックからの脱出策であるが、いくらクルーグマンの言うとおりにマネーを印刷しまくっても、どうにもならないでしょうと予言。
そうすれば、実際に経済が浮上しないのに、財政だけが膨らんで、最悪の場合には政府が破綻する、と。

ご存じのとおり、実際には、各国政府が通貨を発行しまくってリーマンショックを回避したのだが、そのぶん、EUアメリカも破綻寸前に陥ってしまった。
よって、本書の予言は的中といってよい。

さて、その後の話であるが。
「金融は、もともと実経済を成長させるために手段に過ぎない。マネーゲーム化した金融は失速させるべき」
「金融の背後に、倫理とか哲学などが必要だ」
という話で、二人は意気投合するわけだ。

ええ~、とがっかり。
そんな話は、この30年、いやひょっとしたら半世紀前から唱え続けられてきた話である。
しかし、実際には、経済は「儲けたいと皆が考える方向」にしかいかなかった。
いや、全体が儲かるわけではなくて、個々人が「儲かる」と思った方向という意味であるが。
それがリーマンショックであるし、その前でいえば日本のバブルとその崩壊である。

2人のいう
「マジメにこつこつ努力する日本の文化を、「勝ち組、負け組」に分けたマネーゲームの連中は」とんでもない野郎だ、という批判について、まったくそうだと思うけれども。
だからといって、人間が倫理や哲学に沿って(金儲けよりも)動くとは、私には思えませんなあ。

評価は☆。
財政破たんの可能性を指摘して見せた、その分析眼に敬意を表して。

原発事故があっても、早い話が金が儲かるので原発いいじゃないかという意見だって半数はあるわけだし(銭ゲバなんだけど、なぜか憂国の士だったりする)
天然ガスが欲しければ、他国の島を「我が国の領土」なので、あんたは反省が足らん、といって戦闘機を飛ばしたりする。
それを動かすのも、やっぱりカネなんである。

とすると。
まあ、倫理やら哲学やらが経済学と一致するのは、私の生きているうちには起きない事態ではないか、と。
そんなふうに思うわけでありますよ。