Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

不思議な経済大国 中国

「不思議な経済大国 中国」室井秀太郎

いまや中華人民共和国(以下 中共と略す)のGDPは日本をはるかに抜き去り、米国に続いて2位である。
このままの成長率が続けば、2030年を待たずして、世界一の経済大国になるであろう。
しかし、この中共、我々日本人が考えると、どうにもおかしな話が転がっているのである。
そんな「不思議な」話を集めた本である。

有名な話に、中共の経済指標がまったくアテにならない、というのがある。
これは、誰あろう、中共の首相自身が語っているのである。
この現象には、中共の政治システムが深く絡んでいる。

まず党中央が、5か年計画に基づき、その年度の成長率を打ち出す。(市場主義経済で5か年計画って、、、などと考えてはいけません)
その目標が、各地方政府にダウンされていく。
役人は、この数値を達成すれば出世できる仕組みになっている。
つまり、ありとあらゆる作文をし、テクニックを弄して、高い成長率を達成した報告をするのである。
中央政府は、この地方政府の数字を合計する。。。と、トンデモナイ成長になってしまう。
この数字だと、おそろしく辻褄があわないので、これを党中央が「手加減して」数字を発表する。
つまり、誰も本当の数字なんか、分かっていないのである。

中共の公害問題も、ここに原因がある。
地方政府は、公害を取り締まるより、成長目標を達成したほうが出世になるのである。
だから、多少の公害に目をつぶる。みんなが目をつぶると「窓を開ければタバコが吸える」「水道をひねれば豚汁が飲める」社会が出来上がる、というわけである。

金融はさらにおかしい。
まず、人民元は「管理された変動相場」になっている。公式には「通貨バスケット」制に基づいている。
しかし、そのバスケットの中身を誰も知らない。
管理されているので、そもそも外貨交換自体、自由ではないのだし。

銀行の不良債権も巨額に上ったが、リーマンショック後のある日管理公社ができて、そっくり不良債権を公社に移管。
魔法のように不良債権は消えた。
で、その管理公社の不良債権はどうなったのか?いまだ処理のメドがつかないのだそうだが、まあ、そのままで済んでいる(笑)。

上場市場に至っては、資金難の企業が資金調達のために上場するので、本当の優良企業は上場しないという(苦笑)
市場関係者自身が、中共の上場企業は欧米の基準には到底及ばない、と自認しているらしい。

しかし、それでもなお、世界は中共の経済成長頼み、なのである。
いまや米国の最大債権国は中共だ。
米国は、中共米国債を大量に放出すれば、一気にドルが暴落し、国家没落である。
一方、中共は、貿易黒字でため込んだドルが暴落してしまうので、国家財産が大量に失われてしまう。中共だって売れやしないのである。
中共と米国は、互いに牽制しあいながら、しかし、生ぬるい妥協を繰り返してナアナアでやっていくほかない。

評価は☆☆。
どえらい世の中になったもんだなあ、と実感する。

サブプライムショック、リーマンショックで世界経済は危機に追いこまれたが、そこを支えたのは中共の無謀ともいえる経済成長であり、それを支えた大型公共事業の連発である。
これなくして、世界は持ちこたえられなかった。
経済成長こそもっとも大事である、という信念があるならば、中共にいくら感謝してもしたりないくらいである。
そころが、世の中で経済成長至上主義の人ほど、中共の悪口を言っているような気がする。
原理原則のどこかがおかしくなっているのであろう。

私は、支那人が嫌いではない。
しかし、中共政府が嫌いである。
今後、もしも日本が経済成長を続けようと考えるなら、中共に妥協する必要がある。
政治的な摩擦は避けて、ごめんなさいすいませんもうしません反省していますと額を擦り付けながら、土下座外交をするのがもっとも効果的だ。
なぜなら、そのほうが経済成長できるからである。
経済成長こそ国益だと考える人にとって、当然、日中友好土下座外交であるので、これに反対する者は国賊だ。

私は国賊呼ばわりされても構わないし、貧乏でも構わない。慣れているからだ(苦笑)。
カネによって左右されない価値がある、と信じている。