Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ハイ・フィデリティ

「ハイ・フィデリティ」ニック・ホーンビィ

巷では映画化されて名作と言われている小説だが、昔読んだときはまったく面白くなかった。
で、思うところがあって、再読してみた。
結論から言うと、実に面白かった!

主人公のロブは、売れないレコード店を経営している30代半ばの独身男。
やり手の女性弁護士、ローラと同棲していたが、別れたばかりである。
原因は、もちろんロブが女々しいダメ男で、本人よりも「その人が何が好きか」で人を判断するという狭量な男で(苦笑)
かつ、当然のようにローラはそんなロブに愛想をつかして他の男に走ったからであり、
かつ、その男がかつてロブのアパートの階上に住んでいて絶倫だったせいである。
なぜ絶倫と知っていたかというと、階下の2人には、当然に階上の物音が聞こえていたからだった。

そして、ロブは、売れないレコード店で店員の2人と「ベストファイブ」を作りあい、週末に酒を飲み、
月曜日を機嫌よく迎えるためのテープ作りに励む。
日曜日を、レコード棚とテープデッキのメータをにらめっこしながら過ごすのである。
で、ロブがそんな生活をすることになったのは、大学時代に、付き合っていた女の子のふられ、そのショックのあまり
大学を中退してレコードショップで働き始めたことがきっかけだった。

ロブが勇気を出して、その大学時代の元彼女に会いにいったら、相手は、ロブのことなんぞ、とっくに「思い出」にしていた。
つまり、悩み続けていたのはロブだけだった。

そこに、ローラからの電話。なんと、彼女の父親が亡くなった。
ロブは、かつて会ったことのある人間でもあり、彼女の母親が喜ぶという話で、仕方なく葬儀に出かける。
孤独に打ちひしがれ、復縁を考えるローラに対して、ロブが一番気にしたのは「で、あいつはよかったのか?」ということだった(笑)
そんなロブも、ローラの気持ちを少しづつ理解をしはじめ、彼女のことを自分の人生に欠かせない存在だと思うようになる。
ところが、そんな中でも、ちょっと腕を出した若い雑誌社の女性記者が取材に来ると、すぐに「テープをつくってあげる」といってしまうのだ。
これはいけない、と考えてテープは郵送にしたはずが、なぜかバーで一緒にいる。。。

そんなロブだが、ついにある決心をした。。。

うーむ、なるいほどねえ。
このダメ男の自虐ぶりが、当時はわからなかったんである。
何故か?そう、自分の鏡を見せられて(しかも、そっくり!)不機嫌になったから。
今ようやく「しょーがねえなあ」と思えるようになった、というわけだ。

で、評価は☆☆。かなり、いい。

まあ、本書の主人公のいうように、男が下半身のある器官を中心にして生活するようになることは避けられず、
しかも、それはほとんど、頭脳とは関係ない(苦笑)。

で、私も知命であるから、そういう疾風怒濤の時期は過ぎたわけである。
思い出せば、苦労はしたものの、あれはあれで懐かしく思う。
寂しいか?いや、そんなことはないね。
もう充分、であります(苦笑)

拙宅にも、いまだカセットデッキは健在であり、その気になればテープを作れる。
自分のお気に入りのベストテンだけをつくって、えんえんと流せば、別にプレゼントする相手はいなくても、それはそれで楽しい行為かもしれない。
しかし、私は、そんな「マイ・ベスト・テープ」を作ろうとは思わない。
だって、そんなものを作ったら、せっかく大好きな音楽も飽きてしまうじゃないか。

好きなものは、飽きないように、淡々と接する。
いつしか、そんな癖がついたことにも気づかされた次第。