Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

東京ロンダリング

「東京ロンダリング」原田ひ香。

タイトルが面白そう、というだけで購入(笑)。

主人公のりさ子はバツイチの30すぎ、もと人妻。
不貞が理由で離婚されて無一文になり、不動産屋の紹介で部屋のロンダリングをしている。
今の法律では、賃貸物件で死人が出た場合に、その直後に入居する人には告知しなければならないが、さらにその次の人には告知義務がない。
変死が出た部屋、ということになるとどうしても敬遠されて家賃も下がる。
そこで、りさ子のような「ロンダリング」をする人間が必要なのである。
つまりは、そういう「訳あり物件」に1ヶ月以上居住して、次の人に「心理的瑕疵」を告知しなくて良いようにしてしまうのである。
なにしろ大東京で、人が住むからには、必ず死人は出るのだ。

冒頭、りさ子が居住する部屋には、その前の居住者と付き合っていた女が押しかけてくる。
居住者の男は入浴中にハートアタックを起こして急死してしまった。
女は泣き崩れる。これが導入。
つぎに、りさ子が入居することになったのは、古い風呂なしアパートである。
眼の前に銭湯があるから、それで良いのである。
自炊を一切しないりさ子は、離婚以来、気力を失って、ただ部屋でミステリを読み散らかすだけの生活をしている。
テレビもみない。
食事は外食、選択はコインランドリーで済ます。
その食事に出かけれる近所の定食屋の息子が彼女のことを気にかける様子が出てきて、物語が展開しはじめる。
そんな中、りさ子と同業者の男が行方不明になった、と連絡が入った。。。


なるほど、と思わせる背景は見事である。
登場人物が2時間テレビドラマのように(笑)きれいに性格づけがなされている。
よって、さくさくと読みやすい。
再生の物語、とも言えるかな。
あっさりして悲壮感がないところがいい。
評価は☆。

日本人の読者が好む、これみよがしの大ロマン(苦笑)が好きな人には合わないと思う。
けど、こういうサラッとした物語は、私は嫌いではない。
もっとさらっとしていても良いぐらいだが、そうなると東京よりはニューヨーク、アーウィン・ショーみたいになってしまう。
それはそれで問題なような気がするので、これでいいんだろうな。

余談だけど、私は不動産運があまり良くない。
バブルの後処理で掴んだワンルームマンションの処理には、かなりの長期間、苦労した。
今ではすべて返済したものの、タダ同然でも売れない物件である。
よって不動産からみの話は、ろくでもない展開だと、大いに納得するのである。
本書は「ろくでもない」展開ではなかった。
そこがちょっと不満、、、といったら私怨だよねえ(苦笑)。