Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

夏の稲妻

「夏の稲妻」キース・ピータースン。

ニューヨーク「スター」紙の記者ウェルズは、妻と離婚し娘に自殺で先立たれた40半ばの独身男である。
IT化が進む編集部の中で、ひとりもうもうと煙草の煙につつまれながら、タイプライターを打っている名物記者なのである。
そのウェルズに情報屋ケンドリックから連絡が入る。内容は、次回の上院議員選挙に出馬予定の下院議員アドンバンのセックススキャンダル写真を買ってくれ、ということだった。
しかし、ウェルズは議員のプライベートな趣味はニュース価値がない、として断る。

その夜、ケンドリックは何者かに殺害された。
事件にアドンバン議員のスキャンダルが絡んでいることを他紙にすっぱぬかれ、ウェルズは特ダネをのがし、他紙にさらわれたとして首の危機に陥る。
社主は、ウェルズに数日の猶予を与えて、汚名挽回をしろという。
ウェルズは、殺人事件に発展してしまったこの事件を取材し、ふたたび、あの写真を探す羽目になった。
そこで彼は、オハイオの田舎から出てきたおかしな大男に出くわし、下院議員の相手がオハイオ出身の女優志望ジョージアであることを知る。
ジョージアを探し出したウェルズは、彼女を拉致して写真のありかを拷問しようとした連中から彼女を救い出す。
そして、ジョージアの願い聞き入れ、新聞掲載を1日だけ待ってやることにした。
そんなウェルズに、彼を慕っている若く優秀な女性記者ラングストンは「ただのあばずれに利用されているだけだってことがわかないの」と責められる。
そしてウェルズには、事件のピースが突如、はまってみえた。
彼は再び、ジョージアのもとに向かう。。。

アメリカの現代ハードボイルドの水準を示す作品である。
素晴らしい。評価は☆☆。
コナリーにも匹敵すると思う。

人物の象形がきちんとできていて、彼が失ったもの、失ったと思っていたものが描かれる。
都会というものの毒、その誘惑と魅力。
かわりゆく世界、変れない自分。

すでに枯れ果てたと思っていた欲望が、若い女の誘惑で「まだ残っていた」と知らされ、打ちのめされるあたりは、自分くらいの年齢になるとよくわかる(苦笑)。

シンプルな文章の中に流れる哀感が素晴らしい。
まだまだ、こんな良い小説があるんだと、嬉しくなった。
雷雨の日曜日に読むには、最高の作品である。