Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

TPP亡国論

「TPP亡国論」中野剛志。

唐突に衆議院選挙に突入してしまったわけだが(苦笑)実は、私はひそかに自公に注目しております。
自民と公明は、決して水魚の交わりではありませんで、いくつか見解を異にする部分があるからです。

仮に選挙後に、維新が連立に入るからといって、公明を切れるようにはなりません。
全選挙区で、3~4%を握っていますので。これが離反して、相手にいくと逆転劇が続出します。
「公明ぬき」では勝てない候補者がごろごろいるので、自民からは離縁できないわけです。
単純に、数合わせが成り立たないので、仕方がありません。

消費税の軽減税率は、公明の手柄という話で、話し合いはついているようです。
自民党内にも賛成派はいるんですが、ここは公明にゆずる、と。

もう一つ、実は地味ながらTPPですね。
公明党は、TPPには、慎重なので。
ぶっちゃけていえば、反対なのだけれども、与党で自民党が推進しているものに反対といえば連立に影響しかねません。
なので、慎重といっているだけでしょう。

TPP反対論といえば、もっとも有名なのが中野氏なので、この著作を「この機会に」と思って読んでみました。
およそ、TPP反対論の概要を知ることができたが、だいたい、まとめると以下のとおりかと。
1)TPPは輸出を増やしたい米国が日本の非関税障壁を取り去るための陰謀である。日本にとって利益はない。
2)TPPをやると、金融、医療が壊滅する。日本の国民皆保険制度が崩壊する
3)農業が立ちいかなくなり、食料自給率が下がり、日本の食糧安全保証ができなくなる
4)デフレ時にTPPをやると、デフレがひどくなる。デフレ対策は公共事業である。
こんなところかと思います。

正直に言えば、なるほどと思う部分はありましたが、、しかし、全面的に賛成できないなあ、と感じた次第。
まず
1)TPPにせよFTAにせよ、各国の政府が協定をするのはその国の国益のためである。もしも米国政府が、米国でなく日本の利益を考えて協定したら、米国民にとっては売国政府である。
各国の政府がその国の国益を追求することを陰謀とは言えない。
2)金融については、とっくにグローバルになっているので、日本がTPPの影響を受けることはないと思う。医療は、混合診療の問題が出てくるが、これはいわゆる保険適用外の薬を使う場合などで、患者のメリットになる部分も多いと思う。(漫画「「ブラックジャックによろしく」に詳しい)
3)農業は影響を受けるが、放っておいても日本の農業は高齢化と後継者不足で壊滅しそうである。嫁不足というが、そもそも女性が農家に行きたがらない。今までの農業保護政策でダメだったのに、それを継続しても仕方がないし。国際分業のほうが、まだましかも?
4)経済政策で、小渕元総理がバンバン補助金を出して、世界一の借金国になりましたが、デフレ脱却せず、財源もなくなってきている。公共事業の効果は限定的では?

確かに、経済規模でいえば、日米が加盟すれば貿易高で70%以上を占めるでしょう。
しかし、本書でいうように、GDPに占める日本の貿易の比率は一桁ですけど、実は米国もそうです。
なので、同じ理屈でいえば、米国もTPPに血道を上げるわけがありません。
そして、もしも米国が「どうしても日本を加盟させたい」と考えているとすれば、日本とすれば「じゃあ、この条件を飲んでくれなきゃ加盟しない」と高く売りつけることができます。
「降りる」カードを使える分、交渉は有利になるはずでしょう?(というか、今そうやっているように見えます。)
この本は「米国と交渉すると、日本は絶対に米国の言いなりになる」と書いているように見えます。
それならば、そもそも米国は「日本を言いなりに加盟させることができる」はずではありませんか?
交渉に参加すると言いなりにできるが、交渉参加するかどうかだけは、言いなりにできない、、、米国もとんだ間抜け、というわけです(笑)。

評価は☆。
矛盾が多く目につきますし、どうなんでしょうか?
上記でも書きましたが、そもそも自由貿易保護貿易に劣るという保護貿易主義を、どう考えるかによるでしょうが、、、保護貿易で保護された産業が、やがて国際競争力を持つに至ればいいんですが、そうでないと、永久に保護しないといけません。
大丈夫かな、と素直に思ってしまいます。

争点がないといわれる選挙ですが、このあたりの各候補者の主張も、結構な聞きどころだと思います。
都市部と地方では、また違うでしょうし。

あれやこれや、思惑はいろいろ、ですねえ。