Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

徹底抗戦

「徹底抗戦」堀江貴文

あのホリエモンが、保釈中に書き下ろした本である。
堀江氏は、ご存じのとおり、最高裁実刑判決が確定し、2011年6月収監、2013年3月に仮釈放となった。
社会復帰後も精力的な活動を続けておられるが、明らかに服役前と比べて変化があったと思う。
正直なところ、あのライブドア騒動のときは「嫌なヤロー」という気持であったが、最近では丸くなったというか、丁寧に他者とコミュニケーションをとるようになったという印象である。
しかし、それが良いことかどうか、私には分からない。
ベンチャー企業家として、挑戦者のスタイルを貫くなら、以前の「とがった」ホリエモンのほうが良い、という意見もあると思うからだ。

本書は、服役前の書下ろしで、あのライブドア事件の当事者として「何が起こっていったか」が、淡々と描かれている。
装飾の少ない、いかにもビジネス家といったスタイルの文章から緊迫した状況が伝わり、非常にリアルである。
ライブドア事件の本人から見た顛末、警察や拘置所生活について、本人の無罪主張、検察改革などがつづられている。

評価は☆☆。

やはり検察は怖いな、というのが正直な感想である。
ホリエモンは、保釈後もまさに「徹底抗戦」して争ったが、それでも実刑判決を受けてしまった。
裁判において「全面否認」は、ようするに「反省なし」として、執行猶予すら受けられないのである。

この判決を受けるまで、堀江氏はずっと取り調べのため、拘置所に収容されている。
じつに3か月間である。
ふつうの人が、3か月間も拘置所に閉じ込められたら、まず職を失い、社会復帰はできないのではないか。
ある日、突然逮捕されて、外部との連絡もとれない。接見禁止がついていると、打ちあわせ出来るのは弁護士だけである。
いくら社長業といえど、これでは継続は無理なので、堀江氏も社長を辞めざるを得なかった。
普通は、一つの犯罪で72時間プラス20日で、だいたい23日の勾留になるようである。
しかし、事件が大きいと、その犯罪の一件一件に対して逮捕勾留できるので(たとえば堀江氏であると、偽計取引、風説の流布、など)その都度、勾留期間を延長できる。
「格安で仕入れたブランド品」を販売した業者は、それが詐欺にあたるとして(偽物が混じっていた)取り調べを受けたところ、その販売の一点一点に関して、それぞれ立件して調べられたそうである。「認めないなら、ずっとこのままだからな」
これで認めないわけがないのだ。
徹底抗戦した堀江氏は、まさに例外中の例外なのである。

堀江氏が言う検察改革は、この点を指摘しているようだ。
検察官は、捜査、起訴を独自の判断で行うことができる。裁判官と同様、誰にも指示を受ける必要がない。
起訴しようと思ったら、自供するまで取り調べ(つまり捜査)を続けることが可能なのである。
この権限は、あまりに強大すぎないか?というのが堀江氏の主張である。
日本の裁判の有罪率99%というのがしばしば問題になるが、つまりは、本人の自供を得て裁判に臨むので、無罪になることはまずない。
否認を続ければ、勾留延長されて取り調べが続くだけである。その間、働くこともできないわけで、職を失い、家族は路頭に迷うことになる。
保釈は、起訴されたあとでなければできない。
「はい、認めます」以外の選択肢はない。

犯罪は、誰にでも、どこにでも起こり得る。
商売上でのトラブルとか、仕入れ先に問題があったとか、商品に問題があったとか、あるいは販売先が怪しげな商売をやっていて共犯にされることは、どんな商売でも起こりうる。
その場合に、実際に我々ができることは、ほとんどない。
刑事事件の弁護士は、実際には情状嘆願するしか、手がないのが現状であろう。
田中角栄から鈴木宗男まで、仮に代議士であってもそうなのである。

考えさせられる本であるし、そこから復帰した堀江氏は、やはりすごい人物なのだな、と思わずにはいられない。