Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

リカ

「リカ」五十嵐貴久

女のストーカーに狙われた男の恐怖。ホラー小説。

主人公の本間は四十代のサラリーマン。妻と娘一人にも恵まれている。
会社では副部長という、可もなく不可もない地位にある。出世頭でもないがオチコボレでもない。
平穏無事な日々ではあるが、もうすぐ五十になってしまえば、会社における自分の先も見えてくる。
そこに旧友から「出会い系サイトがいいですよ」などという話を聞かされ、スリルを味わおうと利用を始めた。
最初はうまくいかないものの、そのうちコツを覚えて、ようやく「戦果」も見え始めたある日。
「リカ」と名乗る女に興味を引かれて、会ってみようという気になる。
リカは20代後半で看護師の仕事をしている、前の男と別れて寂しがっている風もあった。絶好のターゲットと見えたわけだ(苦笑)。
リカと本間は、毎日多数のメールを交わすようになる。
だが、その様子にチョット変な感じを受けた本間は、リカと実際に会うのを辞めることにした。
なにも今の平和な生活を壊す必要もない。
ところが、そこからリカが豹変する。
本間の本名を調べ、勤務先を調べ、ついには家庭にまで手を伸ばしてくる。。。
本間は警察に駆け込むが、最初は相手にされない。「実際に会ってもいない相手につきまとわれている?」
そんなのは、連絡しなければ良いのだ、というわけである。そのうち忘れるだろう。
実際に何か事件になったら動きます、というわけだ。
だいたい、本間はリカの本名も住所も知らないのだから、警察が相手にするわけがない。
困った本間は、知り合いの私立探偵にリカを探るよう依頼する。
探偵は調査をしてくれたが、リカの異常さや別れた男が失踪していること、おそらくは殺されているだろうことを報告する。
ところが、その探偵も失踪してしまう。
リカが殺してしまったのだ。
やがて、ようやく本間の訴えを聞いてくれる刑事が現れる。リカには連続殺人の嫌疑がかかっているのだ。
そこに、本間の娘が誘拐されるという事件が起こる。
娘は無事に帰ってきて、本間は安堵するが、それは本間本人をおびき出すための布石だった。
本間はリカに拉致されて「二人でずっといるための」儀式が始まる。
刑事は急を悟って本間を救出に向かうが、はたして間に合うか。。。
そして、衝撃のラスト。


ホラー小説というのは、つまるところ怪談である。
読者をぞっとさせなければならない。
どうすれば、読者はぞっとするだろうか?
この手法が、どうも欧米の作家と日本人作家では違うようである。
欧米の作家は「ぞっとするストーリー」を作ることに努力をするようである。
日本人作家の場合は「リアリティ」つまり「こんなことが実際にあるかも」という日常の裏に潜む恐怖を描き出すことに躍起になる。
であるから、筋書きは単純であって、細部に「いかにも」を盛り込みつつ、恐怖の描写を重ねる手法になる。

どっちが怖いか?これはそれぞれだろうと思う。
思うに、想像力がたくましい人は、欧米型のほうが合うと思う。空想の舞台、道具立て、そして驚きのストーリー。
日本人は、割と現実的な人が多いのだろうなあ。
ホラーでも「日常感覚」がないとウケナイわけだ。

どっちが良いとか悪いとか、そういう意味ではないが、なんとなく民族性みたいなものを感じる次第である。
私なんぞは、人生に一回でも良いから、女性のストーカーに追いかけ回されてみたいもんだと思いますねえ。
そっちのほうが「空想の世界」だったりするもんで、ね(苦笑)