Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

日銀バブルが日本を蝕む

「日銀バブルが日本を蝕む」藤田知也。

朝日新聞の経済記者が、日銀のインタゲ政策を「バブル」だと指摘し、その歪みに警鐘を鳴らした本。

本書の立場は中立で、特に牽強付会の議論は見られない。
日銀バブルは、スルガ銀行のシェアハウス投資問題のような不動産投機を推進し、一方でETFの大量買い付けによって株式市場で日銀シェアが4%を占めるまでになってしまった。
もはや官製相場そのものである。
日銀が買うETFは、わかりやすく日経225などの指標に反映する株しか買わないのであるが、それらの株のすべてが浮動株というわけではない。
当然、創業者その他のステークホルダーが売り出さない株もあるわけで、浮動株シェアでいうと、ユニクロに至ってはなんと89%を日銀が保有するという有様になってしまった。
国営企業かいっ、とか社会主義じゃね?などというツッコミが入りそうな話である。
さらにマイナス金利の導入で、銀行は青息吐息。
これで次になにか経済ショックが来ても、もはや日銀には何の手も残されていないので、直撃弾を食らうことは避けられない。
日本国民のみなさん、せいぜい自衛しましょう、、、てな話になるわけである。

実は、インタゲというのは、もともと「バブルを起こす」ことを目的とした政策である。
2%の物価上昇という「ミニバブル」を起こせば、景気が良くなってきたと思う人が増えるので、投資も消費も増えて、ホントに景気が良くなります、というのがインタゲの主張なのである。
だから「インタゲ政策なんてバブルだ!」と騒いだところで、そんなのは屁でもないわけだ。
「その通りですが、それが何か?」でおしまいである。

で、現在の日銀の厳しさは、そのミニバブルがぜんぜん起こらないことにあるのだ。
たしかに、一部の不動産は値上がりしたし(GPIFがREITを買ったりしているので、これも官製相場だと思うが)企業収益は上がった。
公務員の給料も、一部上場企業の社員の給料もちょっと上がった。
だけど、それだけ、なのである。
普通は、日銀やら政府が火を付けると、その火がばーっと燃え広がってインフレが起きて、あとは程度問題なので日銀がこれを引き締める、というのが目論見だった。
ところが、不動産は上がっても投資用の一部だけでその他の地域はまったく上がらず、企業は収益をすべて内部留保にしてカネを握り混んで離さない。銀行がいざとなれば「貸し渋り貸しはがし」をするのはさんざん見てきている。さらに、儲かる投資先も見あたらない。
個人の給料も上がらず、わずかに上がった一部の連中も社会保障費の増額と消費税の増額で効果が相殺されるので、消費はうごかない。
かくして、日銀キャンプファイアは、日銀が株式という新聞紙を燃やす炎だけが寂しく辺りを照らすという有様になったわけだ。

このような大規模な中央銀行のマネー供給政策は、必ず将来の日本経済を毀損するだろう、というのが著者の主張である。
そりゃあそうだ、バブルなんだから。
バブルの後始末はたいへんなのである。

だが、そのバブルそのものが起こらない。今の状況でもバブルといえばバブルなのかもしれないが、だとしたらミニバブルどころかプチバブルである。
プチ贅沢と同じだ。言うほど贅沢というには、あまりにもせせこましい。バブルというのには、あまりにもせせこましいのだ。

評価は☆。
誠実に書かれている、とは思う。
されど、これから大ブレーキが、、、とは、私には思えないのである。
実体経済でいえば、日本にこのさき、未来はないであろう。
まあ、外国人が来て好き勝手やって(邪魔になる日本人はどんどん減るわけなので)楽しく過ごす未来はあるかもしれない。
そのとき、日本というハコだけが残って、別物になっている。
外国ファンドに買われてしまった上場企業(泣)とおなじく、単にハコが残っているだけで、中身は別物である。
そう考えれば、天皇も女系でいいのかもしれない。
オリジナルの日本という国はなくなるんだから、まがいものでも看板になりゃ良いのである。

そんな風景を見る前に、私はこの世からオサラバすることになるんだろうと思う。
となれば、別に知った話か、でおわる。
そういうことである。