Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

スターターズ

「スターターズ」リッサ・プライス。

 

終戦争後の近未来。最近兵器が使われ、ワクチンが「老人と子供」にまず先に投与された。
その段階で細菌感染が爆発してしまい、30代から50代の大人が死滅した段階で戦争が終わった。
残ったのは「スターターズ」と呼ばれる子供と、エンダーズと呼ばれる老人だけの世界である。
親のいない子供が大量に発生するわけだが、その子どもたちは強制的に施設に入れられる。
その施設ぐらしは相当ひどいらしいので、当然それを嫌がる子供たちは、廃墟となったビルなどに住み着いている。
一方、老人たちは裕福で、進んだ医療技術を使い、100歳以上は当たり前で、まず死なない。
老人と子どもたちだけの世界は、ものすごい貧富の格差社会でもある。
一部の裕福な老人の家族の10代だけが、とてつもない贅沢をすることができる。
主人公の女の子は、弟とボーイフレンドがいたが、弟は難病を患っている。
廃ビルの暮らしでは弟は限界だと考えた彼女は、ある施設にいく。
その施設は「ボディレンタル」をやっている。裕福な老人が、若い人の肉体だけを借りて、数日から1ヶ月程度の暮らしを楽しむのである。
その間、若者本人の意識は眠っていて、脳手術を受けた老人の意識を若者に移す仕組みになっている。
レンタルボディはとても高価なもので、傷つけることなく返却しなければならないルールになっている。
ボディを貸し出す若者は、高価な報酬を受け取り、家一軒くらいは買える、というわけである。
このビジネスは非合法なのだ。
主人公は、ボディレンタルの途中で意識を取り戻す。すると、自分は上院議員を狙撃して殺そうとしているのだった。
やがて、ボディをレンタルしているお婆ちゃんと話ができるようになる。
そのお婆ちゃんは、孫が勝手にボディレンタル会社に応募に行き、帰ってこないのだという。
ボディレンタル会社は、上院議員を使ってボディレンタルビジネスを合法化しようとしており、さらに悪事を企んでいるという。
主人公は、お婆ちゃんに協力して、ボディレンタル会社の悪事を暴くことにするのだが、お婆ちゃんの「本体」がある日、殺されしまったらしい。
いったい、ボディレンタル会社では、何が行われているのか。。。


SF的な設定としては、意識をアンドロイドなどに埋め込むというのは定番である。
本作は、それを他人の身体に埋め込むわけで、それがビジネスになっている。
このビジネスをやっている連中が相当に怪しいわけで、ついにこの連中と対決する、というわけである。
主人公はティーンエイジャーの少女であるということもあって、定番の恋なども絡んでくる。
ちょいとお手軽なテレビ番組風のニオイがするのは否めないが、プロットは面白くできていると思う。
評価は☆。
結構楽しめた。

 

思えば、意識というのは不思議なもので、私が「私」と思っているのはなんだろう?という問題は常にあるわけだ。
3年も経てば、人間の細胞を構成している分子はすべて入れ替わってしまう。
すると、3年前の私は物理的には「他人」である。
しかし、私はわたし、というのもまた、どうにも否定できない。
もしも身体がなくなれば、たぶん私もなくなるだろう。なくなるだろうと思うけど、そうでないかもしれない。
それもわからないわけである。
人間の肉体と意識の問題は、そういう不明確な部分があるから、今後も小説として定番のテーマであり続けるに違いない。
これからも、そういうテーマの小説を読むんだろうなあ、と思う。
まあ、あと何冊読めるのかは、わからないけれどもねえ。