Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

チャイルド・ファインダー 雪の少女

「チャイルド・ファインダー 雪の少女」ルネ・デンフェルド。

 

主人公はオレゴン州でチャイルド・ファインダーとして働く29歳の独身女性、ナオミ。
チャイルド・ファインダーは直訳「子供を発見する人」であるが、つまり行方不明になった子供を探す私立探偵である。
どこかの駐車場や観光地で、親がちょっと目を話したスキに消えてしまう子供は、北米やカナダでは相当多いらしいのだ。
実は、主人公のナオミもかつて、そういう失踪した子供であった。ある日、季節労働者の手段が彼女を保安官のもとに連れてきてくれて、彼女は親切な里親のもとに引き取られて、以後は幸福に育つ。
しかし、失踪していた間の記憶は、彼女の中からすっぽりと抜け落ちているのだ。
そして、ナオミは、理由はわからないが、強烈な欲求に突き動かされ、チャイルド・ファインダーの仕事をしている。
そんなナオミが今回探すのは、3年前、両親とともに訪れた森林キャンプ地で行方不明になった当時5歳の女の子、マディソンである。
オレゴンの冬は厳しく、3年も経っているので、おそらく、マディソンが生きている可能性はほぼない。
しかし、両親は探し続ける。ナオミは捜索を引き受け、もともと開拓地だった森林の聞き込み捜査を行う。
ここは自然保護区になっているのだが、広大な森の中では目が行き届くはずもなく、密猟者も横行している。
そんな連中があちこちに住んでいる。
そのナオミに力を貸してくれる森林ガイドや保安官もやがて現れる。
一方、失踪したマディソンは、Bなる男に監禁されて、厳しい生活を送っていた。
マディソンは、その現実の厳しさから逃れるため、かつて読んだ童話の主人公スノウ・ガールが自分なのだと信じ込む。
スノウ・ガールは、Bと心の交流を図る。
恐ろしく乱暴で、まともな教育も受けず文盲のBであるが、徐々にスノウ・ガールに心を開いていく。
一方、ナオミは、かつてこの森林に、度重なる少年への暴行で裁判を受けるはずだった男が保釈中に逃亡したことを知る。
その男はすでに死んでいるはずだったが、ナオミは、おそるべき遺伝子はしばしば残る、と信じて捜査を続ける。
やがて、ついにナオミはスノウ・ガールが残した手がかりを発見する。。。


ストーリーはシンプルなのだけど、マディソンの状況の悲惨さ、さらに過去にナオミが発見した子どもたちの哀れさなどが丁寧に描写されており、情景が浮かんでくる。
著者はもともと社会派のドキュメンタリー出身のようで、かなり細かな取材を行ったのだろう。
さらに、ナオミの封印された記憶が、一緒に里親家庭で育った男性であるジェロームとの愛をきっかけに蘇ってくるラストシーンも印象的だ。
やはりシリーズ続編が出版されているらしい。
迫真の描写で評価は☆。

 

どこの国でもそうであるが、子供が被害者になる犯罪というのは痛ましい。
もちろん、子供が庇護すべき存在である、ということもある。
それ以上に「みんな、昔は子供だった」という共通点があるのだと思う。
私達は大人になって、すっかり自分が子供だったことなど知らないような顔で生活しているのだし、たいがいはそんなことも忘れている。
しかし、こういう作品を読むと思い出すのだ。
自分が子供時代に、夢想や、風や鳥や虫に、いかに簡単に夢中になっていたか。そして、そのために、すぐに他のことを忘れて没頭していたか。
大人になると、みんなカネ勘定に明け暮れて、風も鳥も虫も「そんなもの、一銭にもならない」こととして忘れ去ってしまうのだ。
そして、銀行の残高と月々のやりくりにアタマを痛めるようになる。
しかし、そんな生活でいいんだろうか?と思うのである。
カネ勘定をするために、生まれてきたのだとしたら、なんとつまらないことか。
地面のアリを飽きずに眺めたり、犬や猫に会うと無性に嬉しがったり、小さな空き缶ひとつでいつまでも遊べたりする。
思えば、そんな子供の生活のほうが遥かに人間らしいと思うし、そういう時代を奪う犯罪がもっとも罪が深いとも思うのである。
もちろん、今更、子供の時代に戻れるわけがないわけで(苦笑)
ただ、今の子供達も、幸せな子供時代を過ごせるように願うばかりですなあ。