Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

寒い国から帰ってきたスパイ

「寒い国から帰ってきたスパイ」ジョン・ル・カレ

主人公のリーマスは、寒い国(東ドイツ)から帰ってくる。
待っていたのは退屈な出納係の仕事だった。リーマスは荒れ、飲んだくれる。
やがてリーマスは情報局をやめて、図書館員のアルバイトをはじめる。
そこで、同じ館員の女性と懇ろな仲になる。
ある日、リーマスは「もう戻らない」と言い残して出ていき、その足で食料品店のオヤジと揉めて暴行事件を起こす。
そのまま逮捕され、有罪判決を受けて服役。
出所したリーマスに、ある男が近づく。以前に会った、カネを貸してもらった、そのときの御礼がしたいと言うのである。
何度か男はリーマスにご馳走し、その上で「もっと金になる良い仕事がある」と言う。
リーマスには意味がわかる。
そして、男の言うままに、リーマスは英国を出て、再び寒い国に行く。
そこでリーマスは、過去の自分の活動で掴んだ事実を述べ始める。
リーマスを尋問した男は、リーマスの情報で、実は上層部に二重スパイ(あるいは逆スパイ)がいるという確信を得る。
やがて、スパイに関する裁判が開かれ、そこにリーマスは証人として出廷することになる。。。


スパイ小説といえば、まず出てくる金字塔である。
実は、今まで未読であった。
今回読んでみた感想だが、実におもしろい。
なるほど名作である。うっかり、読まずに死ぬところだった。あぶねえ。
評価は☆☆。
ラストのドンデン返し、そして悲劇的な幕切れが印象的。

そろそろ還暦が近づいてくる自分であるが、この読書の楽しみについて、いよいよ考えていかなければいけないのではないかと思いはじめた。
つまり、残り時間のことである。
申すまでもなく、書物というものは、新刊がぞくぞくと出版されるのだ。
それらを追いかけていくのも楽しい。
しかし、それらの質は玉石混交である。
一方で、本書のように、うっかり未読になっている名作があまた(残念だけど)あるのだ。
そろそろ古典というものを、もっと読んでおかねばならないのではないだろうか。
古典、名作というものは、品質はある程度の保証付きである。
残り時間が限られる中で、質の高いものに集中したほうが、限りある人生として有意義ではないのだろうか?
もちろん、一番良いのは「すべての書物を?!読む」ことであって、しかし、そのためには無限の人生が必要だ。無理である。
新刊に手を出すのをためらうのは、時間と費用の両面でリスクが高いと思いはじめたことによる。
さらに、昔読んだ名作をもう一度読みたい(できれば何度でも)という希望もある。
人生が限りあるのは仕方がないが、世の中のほんのわずかを見ただけで終わってしまうのは、自分の無力を感じざるを得ないことだなあ。