岸田首相は解散について「考えていない」と明言。にわかに吹いた解散風ですが、今回は「伝家の宝刀」を抜けずに終わることになった。
自民党は、独自の情勢調査会社をもっていて、だいたい幹事長が歴代社長の兼務をしている。実は、この会社の使用するシステムの構築をやったことがあるので知っている。
*この日本情勢調査は、さらに各派閥(主に清和会)と自民党の党内幹部(議員ではなく事務局)の綱引きがあったりして、自民党のもっとも深い部分である。
この情勢調調査で、議席減という予想が出たらしい。
野党には勝って自民党政権は続くのだが、議席が減ると岸田さん自身は総裁として責任を問われることになる。それではまずい、と考えたのであろう。
しかし、この「宝刀を抜けなかった」という事実は、残る。
もしも、このあとで政局が流動的になった場合に「大丈夫か?」という疑問が出てくる余地ができたわけである。
トップのつらいのはここで、いったん出したものを引っ込めることは、非常に難しいのである。引っ込めれば「弱腰」だとか「考えもしないで言うからだ」とか、とにかく批判を受けることになるのだ。
トップがトップであるのは、本人がそうであるというよりは、その部下がトップだと認めていることのほうが根本である。そういう意味では、仮に独裁国家であっても、トップは常に「信任投票」が行われていると思わないといけない。不信が募れば、クーデターが起こるからである。
会社なら、株主から信任を受ければ社長だが、自民党総裁は違うのだ。自民党は会社でなくて、互助会とか商店会というほうが当てはまる組織だし、総裁は商店会長だと思ったほうが良い。上意下達などはないのだ。
サラリーマンしか経験のない選挙民が増えているので、このあたりの感覚は理解されにくいのだろうな、と思っている。