Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

妙麟

「妙麟」赤神諒。

 

戦国時代に女性の身で一軍を率いて武名をあげた人が何人かいるが、本書のタイトルの妙林尼はその中で有名な人であるらしい。私は寡聞にして知らなかった。

九州大友氏の吉岡鎮興の妻であり、夫が島津氏との耳川の戦いで戦死してしまったため、鶴崎城をみずから指揮して抵抗。島津勢をさんざんに苦しめ、俗説では16度打ち破ったと伝わる(さすがに盛りすぎか?)その後、島津と和睦し開城したものの、これは偽降であった。

秀吉が九州に上陸すると、島津勢は撤退を開始。妙林尼は「自分も一緒にあとを追う」といって、寺司浜で島津勢に追いつくとそのまま急襲。島津の守将の伊集院や白浜を討ち取った。

戦勝報告に喜んだ大友宗麟は、自分の諱の「麟」を与えたため、妙林尼は「妙麟」になったというわけだ。

秀吉はおおいにこの女傑に興味を持ったらしく、褒美をやるから会いたいと申し出たが、妙林はこれを断っていずこかへ消えてしまった。この妙林は、かなり美貌で有名だったようなので、おそらく、女好きの太閤の虫が騒いだのであろう(苦笑)。

 

この小説は、その妙林の鶴崎城攻防戦をプロローグとエピローグに使い、大部分を若き日の妙林の回想に充てている。大友の軍師、角隈石宗に弟子入りし、女ながらその知略を認められる一方で、キリシタン信者の臼杵右京亮と恋に落ちるも破れ、傷心の彼女をあたたかく受け入れてくれた吉岡鎮興の妻になる、というロマンスが描かれている。

なにぶん資料の少ない人なので、このへんは全て創作であるが、美貌にして知略抜群の若き姫のまっすぐな恋が砕け散る有様は、後年の「煮ても焼いても食えない」機略を弄するようになる彼女の人間的な成長ストーリーとしてうまくはまっていると思う。

評価は☆☆。

こういう資料の少ない人物にスポットライトを充てて作家的空想力で物語を描くのは、ある意味で歴史小説の王道である。資料そのままを書くのが小説だと、狭量な歴史小説マニアがしばしば勘違いするが、そういうものではないと思う。なんといっても「小説」なのだ。

 

ところで、女性ながら城主として有名なのは、NHK大河ドラマにもなった井伊直虎岩村城主で最後は夫とともに処刑されてしまうおつやの方あたりが有名であろう。

武功抜群といえば、のぼうの城で有名な成田氏長の娘、甲斐姫がある。石田三成の攻城戦を失敗させたのは甲斐姫である。城主の成田氏長は、北条に詰めていたので、守城の将は甲斐姫しかいなかったのである。この人も東国一と呼ばれた美貌で、のちに秀吉が側室にしている、、、太閤さん、好き者だったんですなあ(苦笑)

 

まあねえ。腕も度胸もあって、その上美貌。そんな女性がいれば、天下人としてはモノにしたいと思うわけなのでしょうなあ。

私のような小人物は、いつ寝首をかかれるかと不安で、とてもそんな気にはなれないと思いますが(苦笑)このへんが人間の器量の差というものでしょう。。。