Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

お金が欲しいわけじゃないけど

知人の人気カフェのマスターと、久しぶりに新宿で飲んだ。というのは正確ではなくて「元人気カフェのマスター」になっていた。店は、閉店してしまったからだ。

体力の限界だったということだが、そこでの彼の話は、下記のようなものだった。

 

「朝から晩まで、毎日お店で一杯500円のコーヒーを売って、ケーキセットでやっと千円。それでも、朝から行列ができるほど、お客さんが詰めかけてくれて、それは嬉しかった。

休日も、ずっとケーキの仕込み。そうしないと、在庫が持たない。まさに、すべての時間を注ぎ込み、夜は文字通り帰宅すると寝るだけ。

そこまでしても、月の会計を締めてみると、家賃、水道光熱費仕入れ原価を払ってしまうと20万円も残らない。そこから、健康保険と年金を払う」

「会社を売ってリタイヤして、遊んで暮らすほどではないけど、別にもう一生困らない程度のお金はある。だから、お金が欲しいわけじゃない」

「だけどねえ、、、心身をすり減らすくらい働いて、10万円ナニガシのお金、これがオレの仕事の評価だと思うと、それがやりきれなかった」

 

ああ、なるほどなあ、と思った。

そう、お金が欲しいわけじゃないのだ。

 

我々は、仕事の評価を収入という形で受け取っていると感じてしまう。この社会では、仕事をしないと行きていかれないから、仕事の評価は限りなく社会の評価につながっている。

もっと、あからさまな言い方をすると「収入、、、それはあなたの社会の通信簿」ということになる。もちろん、実際には、そんなふうにダイレクトにつながるわけじゃない。ビジネスでは、運不運で結果は180度変わるものだし、仕事で成功しているやつが実際に素晴らしい人間かというと、そんなことはない。私は上場企業の役員時代に、他の上場企業の経営者にかなり会ったが、そのほとんどが嫌なヤツだった(苦笑)個人的には、こんなやつと付き合うくらいなら、一人でワンカップ大関を飲んだほうが遥かに幸せだと思うくらいだった。

だから、ビジネスで成功してすごい資産を築いた人でも、その人が素晴らしい人格だとはまったく限らないと思っている。あえて言えば、本田宗一郎はたぶん個人的には付き合いきれないくらい頑固で上から目線のジジイだったと思うし、あの松下幸之助だって日本熱学事件とか調べると、かなり悪どいことをしているものだ。ただ、人は英雄伝説を作りたがるからな、と思っている。

 

だから、必ずしも収入だけを求めるわけじゃないのだけど。でも、それがあまりに低いと、やっぱり悲しくなってしまうのだ。どこかで、自分の努力を否定された気持ちになるからだろう。これは、感情の問題だから、いかんともしがたい。

 

「別に、お金が欲しいわけじゃないんだけど」

元カフェオーナーの話に、思わず頷いてしまった夜だった。