Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

だからダスティンは死んだ

「だからダスティンは死んだ」ピーター・スワンソン。

 

この人の作品では「そしてミランダを殺す」がとても面白く読んだ。期待して購入。

 

物語では、まず米国に住む2組の夫婦が隣同士になったことから話がはじまる。

ロイドとヘンの夫婦。妻のヘンは版画家であり、子供向けの本の挿絵のほかに個展もたまに開ける程度である。過去に、躁うつ病からくる妄想で他人を傷つけたことがあり、今でも服薬している。ロイドは、そんなヘンを見守っている。

マシューとマイラの夫婦。夫のマシューは教師である。この2組の夫婦の共通点は子供がいないことで、他の家族とパーティになると「いつ子供をつくるのか」というぶしつけな質問ばかり来ることに辟易していた。マイラは引っ越してきた隣人のライフスタイルが自分たちと似ていることから友人になりたいと思い、ロイドとヘンの夫婦を自宅に招待する。

ヘンは、マシューの書斎で小さなトロフィーを見つける。そのトロフィーにヘンは見覚えがあった。ヘンは、躁うつ病のときに近所で起きた「ダスティン・ミラー殺人事件」に異様に執着する症状があった。殺人現場から消えたトロフィーにそっくりだったのだ。ヘンは、自宅に戻ってから夫のロイドにこの事実を伝えるが、ロイドはまたヘンの病気が再発したのだと思って信用しない。とりあえず警察に通報だけして、あとはこの件は忘れるように、とヘンにいう。ヘンはその通りにするが、警察はヘンの過去の病歴を調べており、ヘンの証言を信用しない。

一方、マシューはヘンがトロフィーに気づいたことを察しており、それを勤務先の学校の地下倉庫に隠す。一方で、同僚の女性教師をないがしろにするマイナーなロックバンドの男に殺意を抱きだす。マシューは、女性をひどく扱う男を見ると殺意が抑えられなくなる、連続殺人鬼だったのだ。

マシューは妻のマイラを酒に酔わせた夜に、ロックバンドの男を殺す。が、その姿は、マシューをひそかに見張っていたヘンに目撃されていた。ヘンは警察に証言しようとするのだが、妻のマイラが夫のアリバイを証言したため、またも信用されない。自分の真実を知っているが、しかしまったく証言の信ぴょう性がないヘンに、殺人鬼のマシューは不思議な共感を抱き始める。この女だけは、真実の自分をさらけ出しても安全な相手なのだ。。。

 

連続殺人鬼の犯行を目撃しても、まったく信用されない女性と、その女性に奇妙な共感を抱く連続殺人鬼という組み合わせは斬新だ。面白い。

評価は☆☆。

期待を裏切らないねえ。

 

証言の価値というのは、その人物の信頼性に由来する。で、その人物がどこまで信用できるかということになると、過去の履歴によるわけである。真実は一つなのだが、過去の履歴も変わらない。そして、人は真実よりも、過去の履歴で判断する。

思えば、人間の噂話とか評価そのものが、そういう仕組みになっているわけだ。当たり前のことなのだが、しかし、そこには本当は矛盾がある。過去の履歴が、必ず真実を示すわけではないんだから。

 

女性はDNAの戦略的に、他の女性にもてる男性に惹かれるようになっている。モテ男は、モテたという事実がモテさせる要因になる。一方の30過ぎて童貞の魔法使い君は、たぶん死ぬまで魔法使いである(笑)履歴による判断は、たしかに正確性も高いが、一方で勝者総取りの格差を生み出す。

まあ、少しでも実績を積んで、ひどい負け組にだけはならないようにする程度が、普通の小市民には精一杯というあたりでしょうか。