Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ヴァイオリン職人と天才演奏家の秘密

「ヴァイオリン職人と天才演奏家の秘密」ポール・アダム。

 

主人公のジャンニは、イタリアのクレモナに在住の腕の良いヴァイオリン職人である。物語の冒頭で、ジャンニは護送車つきのヴァイオリンの名器「イル・カノーネ(大砲)」を修理する。かのパガニーニが愛用したという、グァルネリの名器である。

依頼者は、あるコンクールで優勝してこの名器を借りる権利を得たロシアの若い天才ヴァイオリニストであった。修理は無事に終わり、ジャンニと天才ヴァイオリニストは仲良くなるが、このヴァイオリニストのコンサート後のパーティの後で、会場のホテル内で出席者の一人のアンティーク商が殺されているのが見つかる。部屋には、高価そうな装飾付きのアンティークの箱が残されていた。

ジャンニは、室内楽でパートナーを組んでいる友人の刑事に協力して、この箱の開錠に成功する。中は空洞で、その形はヴァイオリン型であった。しかし、こんな小さなヴァイオリンはないはずなのだ。

この殺人事件の捜査中に、ジャンニのところに天才ヴァイオリニストの母親から連絡がはいる。息子が行方不明だというのである。殺人事件の捜査に忙しい警察は、青年が行方不明になるのはよくある話で、おおかた女でもつくったのだろうというが、母親は名得しない。

一方、ジャンニは殺人事件の捜査にヴァイオリンに詳しいというので、引き続き協力を要請され、殺されたアンティーク商の調査でパリ、ついでロンドンに出張する。なんと、その出張中に、アンティーク商に関係した別の人物が二人も殺されてしまい、事件は連続殺人事件となってしまう。

ジャンニは捜査の過程で、あの箱の中身がもともとナポレオンの妹がパガニーニに送ったもので、中には宝石をちりばめた黄金のヴァイオリンが収められていたことを突き止める。数奇な運命をたどったヴァイオリン型のアンティークと、現在の殺人事件がつながる。。。

 

ミステリとしては、あまり巧みなトリックもなく、さして意外な犯人でもなく。ただ、推理の過程で、歴史上の人物であるパガニーニにまつわる逸話が大いに影響してくるのである。そして、当然ながら主人公がヴァイオリン職人なので、ヴァイオリンに関する蘊蓄が面白いのだ。

評価は☆。

ミステリとしては、、、まあね。

 

考えてみれば、ヴァイオリンは不思議な世界で、名だたる一級品はすべてアンティークなのである。アマティ、グアルネリ、ストラディバリ

そして、その価格もとんでもないものだ。

ピアノのフルコンサートグランドは、最上級だと数千万するが、ヴァイオリンは一桁上で億単位である。現代のヴァイオリンが、そんな昔の楽器にかなわないわけで、昔の楽器が増えるわけはないから、値段は上がり続ける、、、というわけである。

あのマエザワさんがヴァイオリンの名器を買って話題になりましたが、確実に値段が上がるわけで、投資としては合理的なのだろう。

本書では、師弟関係にあったグアルネリとストラディバリの違いとか、当時すでに大規模な工房だったグアルネリもストラディバリも、当然にすべてが本人制作ではない(むしろ制作監修か)だったことなど、その蘊蓄が面白い。

久々に、CDでヴァイオリン名曲集を聴いてみたほどである。だいたい、ほとんどの有名ヴァイオリニストが使っているのがストラディバリなのだが、、、グアルネリの音も聞いてみたいと思った次第。違いがわかるだろうか?ちょっと疑問に思うのである。