Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

海燕ホテル・ブルー

最近、年齢のせいか、前に読んだ本をまた買ってしまう馬鹿をよくやるようになった。
「新刊!」なんて書いているから油断して、読んでみると、たぶん他の出版社で既読。
くやしいが、なお情けないことに、細部の記憶もぜんぜんない。結局、最後まで読んでしまう。
あ、それなら再読でも気にしなくていいわけか。。。ガックリ。。。

で、「海燕ホテル・ブルー」船戸与一である。
ある男が刑務所から出所する。3人で、現金輸送車を襲うはずだったのに、当日参加しなかったもう一人の裏切り仲間を追って下田にいく。そこで「海燕ホテル・ブルー」の再生を夢見る、奇妙な男の手伝いをしながら、もう一人の裏切り仲間を見つける。そいつは、韓国からの密入国女と暮らしている。いったんはカネで話がついたものの、男は密入国女の誘惑に応じて、裏切った仲間を殺す。
そこに、刑務所から、もう一人の仲間が出所している。その男を、自分のときと同じように、密入国女が誘惑。嫉妬に駆られた男は。。。最後に破滅するまで。

この小説のおもしろさは、刑務所から出所したばかりの「きりっとした」男が、女と暮らすうちに贅肉が付き、妻に嫉妬する「きりっとしてない」男になっていく、その部分である。最初は乾いたハードボイルドの文体が、後半は哀れに情けなく分裂していく。まるで「アルジャーノン」である。

なぜ、ハードボイルドの男が、女と付き合うとうまくいかないのか?それは、女が「きりっとした」ところに惚れるから、なんだなあ。ところが、男は惚れた女の前で「きりっと」できない。それ故、愛想をつかされる。身につまされる話である。

小説としては、蛇の暗喩がまったく効いてないし、女については小説のテーマではないので仕方ないけど全く書き込んでない。
本来ならおすすめできないけど。
テーマ的に、いろいろ考えさせるところが多かった。
おまけして、ミシュラン採点で★にしよう。