Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

白骨

「白骨」G・M・フォード。

主人公のコーソは、犯罪小説を書く作家である。
あるノンフィクションを書いたところ、その証人が雲隠れ。コーソは、小説のモデルから事実無根と訴えられてしまう。
しかし、あくまで小説なので、犯罪ではない。大陪審の出頭命令まで逃げ続ければいいだけなのだ。
それで、女性写真家のドアティを伴って空港に行ったら大雪。
危機感を感じたコーソは、まだ動いている空港まで車で行こうとする。しかし、大雪で遭難。
命からがら逃げ込んだ納屋で、床板をはがして暖をとっていると、なんとそこから白骨がゾロゾロと出てきた。
あわてて警察に連絡するコーソだが、彼自身が警察に留置されてしまう。
なんとか出頭命令の期限まで逃げたいコーソは、見張りの警官を隙をみて縛り上げ、逃走する。
ところが、なんと、その縛り上げた警官が頭を撃たれて死亡しているのが発見された。
コーソは、ついに殺人犯として追われることになってしまう。
警察に追われつつ、納屋の死体の秘密を追うコーソだが、ついに警察に捕まってしまう。
あやうく射殺された警官の遺族に殺されそうになったりもするが、検死結果から、コーソの犯罪ではないことが証明される。
そして、その自由と引き替えに、コーソは白骨死体事件の真相に近づくことになる。

導入部は実にうまい。
主人公のコーソと、女性写真家のドアティ(かつてコーソの恋人だった)とのやりとりも、実に軽妙な台詞があって、思わずにやりとさせられる。
けど、なんというか、ハードボイルドの「再生」がない。

主人公のコーソはタフガイだが、ヘンにさわやかすぎる。人間味がないのだ。
いや、イカレちまったラテン男のような脳天気さはあるのだが、それを人間味とは言わないと思う。
ハードボイルドは、基本的に傷ついた男の再生物語なのである。
この作品はシリーズ物ということもあるんだが、ただの脳天気なヒーロー物に見える。
よって、評価は無☆。
おもしろくないわけじゃないんだが、、、共感できないし、美しくもない。

ふと思ったのだが、アメリカでは、この小説は売れたんだろう。
アメリカ人が好みそうな、といったら偏見だな。アメリカのパルプ小説ですら、日本の小説よりもはるかに重層的な読み応えのある小説はある。

コナリーやフランシスみたいなのは、ありゃ例外なのだ。
そういう意味では、なるほどと納得したのであった。
いくらなんでも、超一流ばかりゴロゴロあるわけがない。なんの世界でも同じなのだなあ。