Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

イエスの古文書

「イエスの古文書」アーヴィング・ウォーレス。

あの「ダビンチ・コード」に先立つこと30年、実はこんな面白い小説があった!というので発売。

さすが、ベストセラー作家の書く小説は違うな。
話自体は、ある広告業者が「近年、発見されたイエス実弟が書いた福音書」を新しく聖書として出版するので、その広告活動を引き受けて欲しい、と依頼を受けるところから始まる。

最初は、この新しい聖書の内容が圧倒的で、これを一読して「奇跡」が現れたりする。
そこに、この聖書の出版を妨害しようというグループが出現する。
ところが、よくよく調査してみると、確かに疑問な点がでてきて。。。
果たして、真相は?
そして、主人公は、この聖書が偽書であるという証拠を入手するが、そこで出国しようとして裁判に。
もしも本物であれば、重要な文化財を持ち出そうとした罪になるが、偽物であれば二束三文のボロ紙切れだから、無罪だ。
裁判の真相は。。。思わぬ裏切りの連続!

というわけで、なかなか手に汗握る展開になっているのだな。

欧米のベストセラー作家って、実にこういうストーリーテリングがうまい。
日本の作文教育はなってないなあ、とつくづく思うのだ。
ヘタな文学あがりの先生が教える作文だと「見たまま、ありのままを生き生きと」という描写に主眼がおかれる。しかし、自然主義文学や俳句じゃあるまいし、それじゃあ実際に文章を書く訓練にならないのだな。それよりも「面白い話を作って」「人に聞かせる」ことをしないと。
それで、はじめて子供が「自分の創造物を」「他人に理解して貰うにはどうしたらいい?」という「他者の視線を意識した文章の作り方」をわかるようになるんでないかい?

日本の小説も、最近はリーダビリティとストーリーテリングを重視したものが出始めた。
ところが、残念ながら、テーマの押し方が単調にすぎるものが多いのだな。一直線というか、単純バカというか。リーダビリティとストーリーテリングのほかに、何か決定的な要素が欠けている。。。
こういう、一人称の主人公の視点に立ちつつ、重層的でかつ面白い話がなかなか書けない。

秀逸なアイディア、抜群の読みやすさ、先の読めない展開、娯楽小説として上出来でしょう。
ただし、当然「ヒマな時間つぶし」以上の何者でもありません。
だけど、こういう小説を読むふける雨の日曜日なんて、実に贅沢な時間だとおもうなぁ。
☆にしときます。