Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

消えたニック・スペンサー

「消えたニック・スペンサー」メアリ・H・クラーク

当代随一のストーリー・テラー、M・H・クラークの作品。

ニック・スペンサーは癌のワクチンを開発するバイオ・ベンチャー企業の社長。
このニック・スペンサーの搭乗した自家用ジェットが、ある日突然失踪する。
ニック・スペンサーは生きているのか?
この出来事の直前、開発中の癌ワクチンが全く効果が薄いという実験結果が公表されていた。
ニック・スペンサーは、癌ワクチンの開発のために多くの出資者から資金を募っていたから、実は稀代の詐欺師なのでないか?!という疑惑が浮上する。
会社のカネが、使途不明でかなりの部分が消えている疑惑まで浮上。
ニック・スペンサーはどこかに逃亡したのか?
女性コラムニストが、真相を追求し始めると。。。

なかなか、面白く読める。
主題は、もちろんニック・スペンサーが生きているか否か?になるわけだが、最後に明かされる真実は
、思わず読み手をほろ苦い感慨に誘うものだ。
もちろん、ネタばれになるから、真相は書けないけど。

いいんじゃないかなぁ。
いつも思うのだが、海外のストーリー・テラーといわれる人たちのテクニックは、瞠目すべきものがある。なんでこうなったのか?
以前は、日本人作家は手で原稿を書くが、欧米人作家はタイプライターを使うから、筆記量が異なるので、勢い筆記量の大きい欧米人作家のほうがストーリーを練る余裕があるのではないか?という説がもっともらしく行われたことがあった。
ご存じのように、ワープロの普及によって、日本人作家でも大部の小説を書けるようになった。
しかし、以前としてストーリー・テリングでは、海外作家に歩があるように思われる。
これ、実は日本人の「リアリティ重視」から来ているのじゃないか?と思ったりする。
この話をし出すと、小学校の作文教育にまでいっちゃうのだけど。
また別の機会に譲ろう。

評価は☆だ。
読んで損はない。けど、必読の名作、でもない。巧みに構成された職人の作品として、手堅く面白い。
クラークの作品では、ハズレはないのだけど、そういう意味では期待どおりである。
期待を裏切った愚作だったら、☆を増やしてもいいんだがな(笑)