Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ノーベル経済学賞「ゲーム理論」から

ゲーム理論とは、数学の一分野で、20世紀最大の天才との評価もある数学者フォン・ノイマンの提唱によりスタートした。(ノイマン型コンピュータで有名。つまり、今日のコンピュータの父でもある)

本年のノーベル経済学賞は、イスラエルヘブライ大学ロバート・オマーン教授と米メリーランド大学トーマス・シェリング教授の二氏が受賞した。
私自身、ゲーム理論そのものは大学在学時代から知っていたが、この20年間の進歩は大きい。このような「駆け引き」において、数学で記述可能なことを指摘したこの理論は実におもしろいのである。
有名どころでは、「囚人のジレンマ」なんて話があるので、ご興味のある向きは検索して関連ページを読まれることをオススメしたい。政治と違って、この分野ではあまりデンパなページはないから、安心して参考にできるものと思う(笑)。

たとえば、東西冷戦の時代を思い出してもらいたい。
もし、米ソのどちらかが先制核攻撃をしかけた、とする。そうすると、相手国は人工衛星やレーダーによって、必ずこれは探知できる。その場合、相手国は「反撃しない」「反撃する」の二つの選択肢をもつことになる。
もしも、先制核攻撃を行った場合に、相手国は「必ず」反撃の核攻撃を行うことを明言したとしよう。
すると、先制核攻撃を行えば、自国も「必ず」滅亡することになる。メリット(利得という)がゼロである。
すると、どう考えても自国の利得を考えた場合には、先制核攻撃をしない選択のほうが利得がある。
相互確証破壊戦略」と呼ばれるこの理論は、代表的なゲーム理論である。
この場合、もしも相手が「必ず」報復攻撃をするのでない場合に、核攻撃の可能性が生まれることにご留意願いたい。逆に、相手が「必ず」報復を行わない場合が、核攻撃の可能性がもっとも高いとする。
このような利得の最大値がきまるケースを「ナッシュ均衡」と呼ぶ。ナッシュ均衡解が成立しないゲームもあるので、プレイヤーにとって大事なのは、自分が行っているゲームの種類を見極めてナッシュ均衡解を獲得する戦略をとることなのである。

この理論は、たとえばマルクス主義のような資本家対労働者の対立関係においても応用できる。
資本家は労働者を搾取することで利得を得る。しかし、労働者は、労働者でなくなる(怠ける、失業するなど)という選択肢もある。仮に、すべての労働者が自主失業したとしよう。すると、そもそも資本家は搾取できる相手がいなくなるので、資本家の利得も失われる。資本家が効率よく「搾取」を行うためには、利得を労働者に分配しなければならない。どの程度、利得を労働者に分配すれば、もっとも効率よく資本家が利得を上げることができるか、ゲームの性質を分析すればナッシュ均衡解が存在するはずである。これは、実際にはしばしば企業が「労務倒産」(人件費を払いすぎて会社がつぶれること)をする理由の説明として成立可能である。その場合、正しくは「資本家が労働者に搾取された」ことになるはずであるが、あまりそのような説明の仕方はされないようである。私にとって、イデオロギーの不思議なところである。
ゲーム理論的には、利得の分配戦略に失敗した、という。

これらナッシュ均衡解は、数学の行列を利用することで記述可能である。

ところで、ゲーム理論によるノーベル賞受賞とは、単に古典経済学を数学的に記述したようなケースとは違って、先行した数学理論が経済学の分野での貢献を認められたことで画期的な出来事だろうと思うのだが、大手新聞ではあまり取り上げていないようである。
まあ、日本人が受賞したわけでもないから。。。とは思うのだが。
実は、ゲーム理論は、上述したような立論が可能であることから、左系知識人(なぜか数学者は少ないようだが)には非常に評判が悪いのである。
マルクス主義による剰余価値理論の数学的記述がいまだ成功していないことも影響しているのかもしれない。

つまり、我々の知っているマスコミは、やっぱり偏向しているかもしれないと思ったりするのだ。
自民党議員の馬鹿坊ちゃんや、合憲判決のときは小さく、違憲判断(しかも傍論で、そう言い得るかどうか)のときは大騒ぎするのを見ると、なんだかなぁ、と思ってしまうのである。
もうこのパターンには飽きたから、別にいいんだけどね。。。

*「ゲーム理論」について知りたい方は、講談社ブルーバックスの方が面白く読めると思います。こっちが古典です。日経新書にもありますが、こちらの方が新しく網羅的ですけど、ブルーバックスより面白さでは負けるような気がします。