Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

マネー・ボール

マネー・ボールマイケル・ルイス

米大リーグの不人気球団、オークランド・アスレチックスは、メジャー最大の高給取り軍団のニューヨーク・ヤンキースの1/3の年俸しか支払えない。
そんな貧乏球団チームが、いかにして金満球団と戦い、見事プレーオフに進出していくか?という実録ものである。

ゼネラル・マネジャーのビリー・ビーン氏は、大リーグ機構に呼ばれて
「大リーグの球団は、勝利をカネで買うようになってしまった。自分たちオークランド・アスレチックスが現在好成績を残しているのは偶然の産物であり、このまま数年以内には年俸と同じく最下位球団になってしまうに違いない。大リーグ機構は、各球団間の公平を考慮するべきだ」と主張する。
これ、実はビーンGMの「真っ赤なウソ」なのである。実は、そんなこと、全然考えていないのだ。
言うだけならタダ、それでトレードの優先権でももらえればめっけもの。実際は、貧乏球団であって、他球団が油断しているので、独自のチーム編成で勝利をもぎ取ることができるのである。

ことの発端が面白い。
ある野球シミュレーションゲームのマニアが、一般に野球で重視される「打率」「ホームラン数」「盗塁」などとチームの「得点」が、全く比例していないことに気付く。
実は、チームの得点と、これらの要素は関係ない!
そして、彼は、チームの得点力のキーを握るのが「出塁率」と「長打率」であることを見出して、自費出版でデータブックを出す。これを読んだのがビーンGMであった。
ビーンGMは、このマニアの分析を実際の球団運営に反映することを決意するのだ。

一般に、打率やホームラン数の多かったり盗塁のうまい選手は年俸が高い。そこでビーンGMは、打率が低くても出塁率の高い選手を集める。フォアボールを選ぶ選手である。
「野球は、スリーアウトのゲームだ」つまり、アウトをとられなければ良いことになる。
バントは、ワンアウトを進呈するから禁止。盗塁は名手でも1/3はアウトになるから禁止。常識やぶりの破天荒な作戦である。

投手も「防御率」や「勝利数」は全く評価しない。被安打は「打たれたときに、野手のいるところにボールが落ちるか否かは運の問題」だから無視。結果、奪三振が多く与四球の少ない「内容」だけを見てピッチャーを集める。

有名選手をトレードで売り、無名のマイナー選手を代わりに獲得する。そうして貧乏球団の資金を捻出する。ドラフトでは、本人さえビックリするような大学の無名選手を指名する。
この手法で、アスレチックスは大躍進したのである。

実は、大学時代に野球ゲームに凝っていた。毎日毎日、飽きずに選手のカードを眺めていた。連敗しては悩み、打線を組み替えるのに毎晩考えていた。そのクセは、物事の戦略を考える上で「強み、弱みを見極めること」「その上で、最適解を見つけること」「論理に従う勇気」を身につけることで役立った。
私が最初に入社したのは経営コンサルタント会社だったが、新人研修のときに指導役員から「どこでそのような思考法を身につけたのか?」と質問されたことはよく覚えている。
私が今日あるのは、野球ゲームのおかげに違いないと思う(笑)

物事を、基本から論理的に考えてみること。そして、どんなに「常識」と違う結論が出てこようとも、自分で考えた結論を信じる勇気。どのみち、私には実力なんかないんである。だから、他人と同じ事をしたら絶対に勝てない。合理を考えていく以外、私の生きる道はないと決めたことは本当に良かった。

そういう個人的な思い出は抜きにしても。
こういう話、大好きである。
ホントに面白いんだから。

評価は☆☆☆。文句なし、読んで損なし、面白いことでは出色。丸谷才一氏の激賞もむべなるかな。
ただし、野球に詳しい人向けである。