Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

拒否できない日本

「拒否できない日本」関岡英之

日本の構造改革は、米国の年次改革要望書に従って行われている!アングロサクソンは日本を滅ぼすぞ!という分析を書いたトンデモ本(笑)。
つまり、この本の「アングロサクソン」を「ユダヤ」、「日本」を「世界」に置換すればよい。そのような本であると申して差し支えない。
ユダヤ陰謀本だって、ちゃんとそれなりに事実に基づいて書いてある。しかし、それでもトンデモ本である。それは何か?簡単に言えば、言ってもしょうもないことを大まじめに書いて「いまさらのように驚いてみせる」所行のゆえにトンデモ本である。この本も全く同じだ。

ハッキリ申せば、今さら大騒ぎするほうが馬鹿である。
基本的に、すべての国が自国の国益を考えて行動するものだ。中国は中国、韓国は韓国、アメリカはアメリカの得になることを画策するので、それ自体を騒ぐほうがどうかしている。

だいたい、アメリカの「年次改革要望書」だけが「一見、日本の消費者のためになるように見せて、その実アメリカの利益を狙っている」などという一方で、おなじアメリカ製の日本国憲法だけがその埒外であるという主張自体が、まったくおかしい。新民法の立案者が個人的に日本に対するいくばくかの思いやりを持っていたとして、なんで年次改革要望書の立案者がそうではないと言い切れるのかね?
アメリカがつくった憲法は「善」なのに、アメリカが主導する構造改革は「悪」だという分裂ぶりは、へそが茶を沸かす。寝言は寝て言え。

現在の世界経済の中で、アングロサクソンが圧倒的に力をもっているのは事実だ。
忘れたのか?
我らが祖先は、だから命を賭けて戦ったのだ。お前なんぞに言われる筋合いもない。今さら言うな。

しかし、残念ではあるが、日本は徹底的に敗れた。アングロサクソンに屈服した。物質的だけではなく、私に言わせれば東京裁判によって、日本人の「霊的防衛」も木っ端みじんに打ち砕かれた。アングロサクソンの世界支配に異を唱えようとしたことは、日本が世界征服を企んだことにされた。A級戦犯の処刑にあたって、アメリカはナチスのように魔術をつかった。それは今上天皇(当時の皇太子殿下)の誕生日に処刑を実行することである。右翼といえども、この日に半旗を掲げることはできない。アメリカは呪いをかけた。

我らの祖先は、帝都を大空襲され、原爆を2発落とされ、戦争の結果を「犯罪として」裁かれた。アングロサクソンに土下座し、私たちは悪いことをしました、と何度も言わされ、括り殺された。
そして、憲法をつくってもらった。
この国は、すでにそのときから、独立国なんかであるはずがない。政府はあるが、構造的にはアメリカの衛星国家という名の属国である。
それ自体を良しとし、経済が良ければ良しとし、国の誇りを持つ奴は右翼と言われ、学校では日の丸も君が代もダメだと言われ、コカコーラを美味いと思い、金髪碧眼をかっこよいとし、日本家屋を壊してマンションを建て、各家庭から床の間さえなくなり、日本の伝統ではない生活を有り難いと思ってしてきた。それが日本人である。もう、ここまで来たら一緒であろう。
アメリカ製の憲法をいただき、アメリカの軍隊が駐留し、アメリカの経済に取り込まれて、せっせと貯金してアメリカの国債を買って生きる。それが戦後日本の生き様である。

だけど、仕方がない。
だって、勝てなかった。まったく歯が立たなかった。しまいには特攻隊までやった。文字通り、命をかけた。しかし、すべて消し飛んでしまった。骨の髄からかなわないと思わされた。

我らに、いまさら何ができるのか。

こんな本を出すなら、まず最初に言え。「あのとき、負けるべきではなかった」と。
しかし、それは全くかなわぬ夢であった。この世は物質で出来ており、すべてが物質より出る。それがアメリカが日本にたたき込んだことであり、戦後の日本においては自民党共産党も物質主義に疑問を持たぬ点で同類である。

だけど、それ以外に、日本のいきる道はない。それでも、どうにかこうにか、生きてはいかれる。誇りなど要らない、哲学などいらない、ブタの生でよい、精神などクソの役にも立たぬ、馬鹿なことを考えないで、ただ金を儲けてモノを追いかけて暮らせ。
我ら日本人は、ほかに生きる方法がない。

評価は☆だ。
つまり、トンデモ本として普通の出来だ。
それ以外に、特に改めて本書に学ぶところはない。当然のことである。