Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

日本共産党

日本共産党筆坂秀世

もと日本共産党ナンバー4と言われながら、セクハラ問題を起こして議員辞職させられた(!?)著者の本。

単なる離党者の暴露本、とみたい向きもあるであろうが、私の読むところ、決してそんな私怨によるいい加減な本ではないよ。
一方で、「ほれみろ、だからアカはいかんのだ」というお手軽な左翼批判本でもない。

私のよむところ、これほど真摯な「革新政党」政治家による批判(もちろん、自己批判も含めてだ)は珍しいのではないか。

なぜ共産党は「無謬」でなければならないのか?
なぜ「資本主義の矛盾は、社会主義へと移行することが決定的」なのに、共産党の党勢ふるわず、社会主義国家は続々と破綻するのか?
なぜ他の野党との共闘もできないのに「民主連合政府」実現に近づいていると言えるのか?
なぜ赤旗の部数減少に苦しみつつ、一般党員に大変な犠牲を強いる一方で、政党助成金を受け取ろうとはしないのか?

こんな基本的な「なぜ」について、かつて自分が所属していた政党に対する愛情をもちつつ、その実情を説明していく。

一言でいってしまえば、長く続いた組織の全てに共通する問題点である「自己革新能力の欠如」から、また共産党も免れていない、ということなのだなぁ。自己革新という奴は、必ず「自己否定」からスタートするもんなのだが、組織のトップにいる奴が自己否定することは、まずないからなぁ。他人には厳しいことを言うのに平気(貴族化と言っても間違いでない)になるんだよねえ。

私は、基本的にはリバタリアニズムを支持している(と思う)。しかし、一方で、そもそも競争の埒外におかれてしまった人、負けてしまった人、弱い立場の人たちのための政治勢力が必要であるという意見には、100%賛成する。
そうでなくば、世の中がおかしくなってしまうと思うからだ。

私自身、かつては何度も選挙のつど「日本共産党」と書いて投票した人間である。今は、考え方がだんだんに変わっているので、共産党には投票しなくなった。
それでも、共産党が存在すること自体が悪いとは全く思っていない。むしろ、なくてはならぬ存在だと思っている。むしろ、彼らの存在が、真に苦しい立場の人間のためのものになっているのか否かが疑問であるくらいだ。
「歴史の必然」で「政権奪取」を唱えるよりも、まず目の前の弱き人を助けるべきだと著者は主張する。まっとうな政治家の発言であろう。
己自身が苦しんだ、そのような問題を赤裸々につづった、その姿勢を真摯であると私は申すのである。

セクハラといっても、真相がどの程度のことであったか否かわからない。
ただ、この書を読む限り、こういう人が政治家でいても良いと私は思った。

評価は☆☆。
お手軽で皮相な政治本でないことは確かだ。
それどころか、一人の政治家の苦しみが伝わってくる。率直に良書と思う。