Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ダーク

「ダーク」(上・下)桐野夏生

発表時に、賛否両論が激しく戦わされたらしい。

簡単にいえば、この作品はハードボイルドである。
以前に、ハードボイルドの本質を「デカダンス」だと書いたと思うが、そういう意味ではこの作品は古典的なハードボイルドだと言える。

シリーズで丹念に育ててきたヒロインを崩壊させてみせる。
「40歳になったら死のうと思っている」いう書き出し。虚無感と、そこから発生する常識外れの行動と災厄。今まで確かだと思っていたものがボロボロになっていく、その過程を余計な感情を交えず、ただ淡々と描く。
今までのシリーズを読んでいた人は「ヒロインの気持ちの変化がわからない」と思うはずである。それこそ、作者のねらい目であって、そういうことを拒否してみせたのだな。

つまり。
シリーズ物のキャラクタ造型を壊してみせることで、ハードボイルドとしての造型を逆に手に入れたことになる。

評価は☆。
うーん、狙いはわかるし、在る程度は成功している。
だけど、在る意味では思弁的な作品だよね。メタミステリ、というやつに近いわけだ。
私にとってミステリは、マンガの代替品なので、必ずしも優れた作品を要求しているわけじゃない。つまり、私は「消費者」であって、作家の「作品」の「鑑賞者」になるつもりはないんだよ。
すまん、そういうことだ。よって、☆は1個でいいかな、と。

高く評価する人がいても、それはそれで不思議はない。きっと真面目な人は高く評価するんだろう。自分は不真面目なのだとわかった。でも、真面目になろうとは思わないのだなぁ。