Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

ブライトン・ロック

「ブライトン・ロック」グレアム・グリーン

主人公は、17歳の少年。わかりやすく言えば、ちんぴらの悪ガキ。
この主人公が、強盗殺人を犯す。彼は、その殺人をすることで「自分が大物になったような」気がする。
もちろん、アリバイ作りも完璧なはずだった。
しかし、レストランで働いている少女に、その偽アリバイ作りの決定的な証拠となる場面を見られてしまう。
少年は、彼女に近づき、彼女が自分に好意を抱いていることを感じ取り、彼女を監視するために結婚を持ちかける。
少女は、少年の犯罪に気づいているが、献身的な愛を捧げ、彼と一緒に地獄へ行くことを決意する。
しかし、少年には、その気持ちが分からない。彼は、少女を、心中を装って殺そうとする。。。

人間の「悪意」を、とことん突き詰めて書いた作品だ。
少年は幼く、自己中心の固まりであり、少女が何を考えているのか全く理解できない。彼にとって、少女の愛は理解不能なものであり、その不安を排除しようと怖ろしい殺人を企てるのである。
全く利己的な少年の心の動きの描写はすさまじい。淡々とした、彼なりの惑乱や怒り、とまどいが描かれるが、その「三人称」で語られる少年の考え方のすごさが、この小説のテーマであろう。
読んでいて、本当に胸が悪くなるくらいに。

だけど、子どもの頃を思い出すと、たしかに皆、それなりに自己中心主義だったのではないか、と思う。それに気づくと、ますますいたたまれなくなる。
昔読んだ「蠅の王」を思い出した。あれの、さらにいやらしい奴だと思えば良いだろうな。

評価は☆。
なんというか。この小説は、人の心の「悪」が主題だろうと思うのだけど、その「悪」は、少なからず自分の中にもあるものだろう。
なんとか、自分という軛の中から逃れようとして、人は色々と考えるものだと思う。しかし、それでも、なかなか聖人のような利他の境地にはいけないものだ。他人の悪口を言うとき、人は必ず「自分のことは棚に上げて」いるだろうと思う。
そういう自分の姿を、これでもかとばかりに見せつけられるような気がするのだ。
読んでいて、つらい小説である。
この小説が、素晴らしい作品だということを認めるのに、全然やぶさかでないけれど、あまり他人にはお勧めしたいと思わない。ここまで気づかないで(?)生きていたほうが幸福じゃないだろうか?などと思ったりもする。
それは言って欲しくなかったよ。。。がっかり。いや、もちろん、自分に、、、なんですわ。はぁ。