Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

千円札は拾うな

「千円札は拾うな」安田佳生

一応(!)経営の本だけど、かなり売れているらしい。野次馬根性を発揮して一読。ううむ、これはなかなか。売れている意味がわかるなぁ。

著者は、すごい苦労人なんですね。この書を読むと「ああ、苦労したんだなぁ」とわかる。分からない人もたくさんいるだろうけどね。。。

なんで「千円札」を拾ってはいけないのか?簡単に言えば、千円札を拾うと、大きなモノが見えなくなるからだ、と書いている。それじゃ、意味はわからないだろうなぁ。

ちょっと解説すると。
だいたい、世の中には「各論」「総論」という奴があるわけだ。「総論賛成、各論反対」なんて、よく使う。じゃあ皆が「総論了解」してて各論がまとまらないのだ、と考えて、「各論」を熱心にやっている会社が多いわけだ。それを、「千円札を拾う」とこの本では称している。ほら、そこに千円があるじゃないですか、それを拾えば千円が入手できるじゃないですか?!

しかし、である。その了解された「総論」は、ホントに「総論」なんですか?という問いかけがあるはずだ。千円を拾いましょうというときの総論は「目を下に向けて、落ちているイイモノを拾っていきましょう」のはずである。こんな総論が、果たして「皆が考えた」価値があるものだろうか?

この本は、実は平易な「経営戦略論」の講義になっているのだ。
わかりやすく言えば。「各論」をいくら積み重ねても「総論」にはなりません、ということなのである。

評価は☆。
この種のビジネス本(笑)としては、優秀じゃないかな。

ちょっと前に流行った本で「チーズはどこへ行った?」なんてのがあった。路線的には、あれと一緒なのである。つまり、現状維持の堅実成長路線をいくら追求しても「チーズはありません」。

経営論としてみると、「戦略優位」の「一転突破型」経営タイプ。このスタイルの良い点は、うまく行ったときの勝ち方が実に鮮やかであることだな。驚くような成功を収めることもある。
悪い点は、いかんせん「勝率」は、すべて経営者の能力にかかってしまうこと。経営資源を傾けた一発勝負型の経営に陥りやすい。突出した能力がない経営者の場合は、ころりと転ぶ手法でもある。まず手持ち資金を確保して、勝ちが見えるまで粘る戦略が取れれば大企業なのだが、中小企業ではそのスタイルが採りにくいからねえ。カジノで、手元資金が多い者が結局勝つという理屈もあるのだけど、著者は、そちらを採らない。これは意図的だろう。
つまり、著者の生き抜いてきた分野が、そのような方法論では通用しない過酷なニュービジネスだった、ということなのである。だから「ああ、苦労したんだなぁ」と思ったのである。

私よりも少し若くて、自力で生き抜いてきた経営者だが、大した人物もいるものだ。素直に敬意を表したい。