Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

夜間飛行

「夜間飛行」サン=テグジュペリ

私は「星の王子様」を、この歳に至るまで未読である(白状)。子どもの頃から「童話」が苦手だった。いかにも「子ども向け」というのは、なんとなく馬鹿にされているような気持ちがしたからである。それに、いかにも「いい話」も嫌いだった。「世の中、そんなワケがない」と思っていたのだ。ずいぶんイヤな子どもである。母親にも「あんたは子どもらしくない」と、何度もお小言をもらった。

その「星の王子様」の著者による名著(らしい)。
なんで、こんな本を読もうと思ったかと言えば、実は私は「飛行機に乗れなくなった」からである。どうもパニック障害というやつは、閉所恐怖を併発するらしく、一度とんでもない思いをして、心底こりてしまった。昔は、ばんばん乗っていたのだ。中国南方航空のオンボロ飛行機(しばしば落ちる上に、異様なニオイが染みついている)にだって、どんどん乗った。今では想像もできない。
帰省シーズンが近づくたびに「昔は飛行機に乗っていたのになぁ。。。」と思うわけで、つい手が伸びた次第である。

話は、郵便飛行機の黎明期のことで、まだヨタヨタ飛んでいる時代だから、濃霧や嵐でしばしば事故が起きる。事故の危険を知りつつ「仕事だから」立ち向かうパイロットと、同じく「仕事だから」冷然と搭乗命令を下す支配人の話。淡々と自己を律する緊張感と、夜の飛行の香気が漂う。ふうむ、名著、なのかなぁ。

たぶん、こういう世界が大好きな人には、無二の本なのだと思う。
私はどうか?「パニック障害で、着席するだけでドキドキし、ドアが閉まるとおろしてくれとスチュワーデスに向かって泣きわめく」男が、こんなハードボイルドの世界についていけるわけないではないか(笑)。
私は「腰抜け」なのである。

評価は☆。
たしかに、「こんな本」は他にはないよ。だけど、2冊目を読むかどうかは微妙。

こういうのを「豚に真珠」というのだろうな。
ついでにいえば、同本に収められた「南方航空機」は、さらによくわからなかった。精読を要求する、という風に解説に書いてあったが、そんな作品は私にはムリである。そもそも「文学的描写」についていけない。

やっぱり「星の王子様」も、読まなくて正解だったのだろうか。子どもの頃からひねくれて育った人間は、長じてもこんな有様だということなのだろう。他人の感情に対する基本的な想像力がない人間なのだと気づいた。
気づいたが、不惑をすぎて、いったいどうもなるもんではない。

我ながら、がっかりしたことであるよ。