Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

私論 国際貢献

ケニアの経済学者シグワチ氏が、ドイツテレビ局の取材を受けていたときの話である。
「これから、どのような援助をのぞみますか」という質問に
「先進国の皆さん、お願いですからこれ以上援助しないでください」と答えた。

シグワチ氏が説明したのはこうである。
ケニアは、農業と観光で成り立つ国だが、数年に一度、大干ばつに見舞われることがある。すると、先進国から山のような「援助物資」つまり食料が届く。
その食料は政府高官や軍が横流しして、安く市場に出回る。なにしろ、原価がゼロである。その結果、ケニア産の食料はまったく売れなくなり、ケニア農業が壊滅的打撃を被る。
干ばつで出荷量が少ないのに、その上売れない。ただ同然で売るしかないので、それでは生きていけない。
先進国が援助をして「ああ、いいことをした」とお茶の間で国民が満足感を得るために、ケニアの農業は大打撃を被り、なかなか発展できないのだ。
同じ事は衣料品にも起こっている。発展途上国は、軽工業中心にならざるを得ないが、その貴重な繊維産業は国外援助のために壊滅する。結果、いつまでも外国から衣料品を輸入しなければならない。

医療はどうか?
考えてみればわかる話である。先進国からやってきた医療チームが、現地の医者より遙かに進んだ機材と薬を使って、現地で無料で治療をする。現地の医者のところには、誰もいかなくなる。
やがて、医療チームは誇らしげに「国際貢献した」と帰国して報告する。現地の医者は食えないから、もうとっくにいなくなっているのだ。
医療チームが、そのまま現地に骨を埋めるのであれば、それは真の国際貢献であるが、そういう例は寡聞にして聞かない。

本当に現地の役に立つことを考えるのであれば、不採算事業であって本来は税金で行うべき道路や飛行場、港湾、発電所や水利事業といったインフラ整備だろう。こういう建設系は、技術力の差が如実に出るから、できれば日本のヒモ付援助のほうが良いのである。品質が違う。
中国の大発展に日本のインフラ整備がいかに効果があったかは、言うまでもない。ま、当然、感謝なんかはされないので、馬鹿の見本みたいなものなんだが。
だいたい、今や我が国は、他国にODA(経済援助)を行う体力自体があるのか疑問だしねぇ。

逆にいえば、その場しのぎの「人道的援助」は、特に産業のない国には、軍隊よりも安上がりにその国の経済力を疲弊させることが可能である。ようは、使い方なのである。対北政策でこの策を用いるというのは、国民世論に真意を説明できないから(したらマスコミが大騒ぎだ)難しいかもしれないが、本当は効果があるのじゃないか、と思っている。

それでは、長期的インフラ整備などは範疇に含まない期間限定のISAFのような活動では、もっとも効果的なのはいかなる援助だろうか?
そりゃ「軍隊の派遣」に決まっている。軍需産業は経済の再生産には効果がないのだから。軍事費は、費用として評価すれば「純支出」。
しかし、現実に治安が乱れたり、反政府軍が跳梁跋扈するようでは、当然に経済発展どころではないのである。だから、費用だけかかって苦しい治安維持活動が、もっとも相手国のことを考えた援助となる。
これは、主に経済面から考えた場合の論理的帰結である。

国際貢献について思うのは、そもそも「相手国のために」行うのか、それとも「自国の国益追求の一環」か、というスタンスの問題だ。
相手国のことを考えるのであれば、もしも治安維持が必要であるなら、これは行わなければいけない。しかし、下手をすれば自国民に死傷者が出る。

もしも国益が、「絶対に自国民に損害を出さない!ただし、他国民が死ぬのは特に問題ない」という決意のもと「国際貢献をしないと外聞が悪いので、なんとかやったフリをする」のであれば、それは民生でよい。ただし、相手国のためになると思うのは勘違いであるから、せいぜい自己満足のためだと思っておくべきである。
もちろん、内外への宣伝活動には有意義であるので、そういう狙いならば、それも良い判断であろうと思うな(笑)
もしも国益が、同盟国の機嫌を損ねない、ということであれば、海上のガソリンスタンドは悪くないアイディアである。なにしろ効果がある上に、かなり安全性が高い。カネがかかるけど、それは必要なコストと割り切ることが可能だろう。この場合も、危険にさらされるのは他国民だけであるから、悪くない取引である。
特に日本にとっては、日米同盟の重要性まで考えると、正直なところ「知恵者がいたものよなあ」と思う。そんなに批判される考えじゃないように思うけどなあ。

以上述べたとおりであるから、ISAFの民生参加と海上補給は、大して違いがない。機嫌をとる対象が国連になるか、米国になるかだが、そう大きな違いがあるわけではない。どちらも、実際に相手国に対することを考えた話ではないからだ。

面白いことに、テロ特措法の延長に関して、民意はちょうど半分を行ったり来たりしているようだ。私は、民主主義は、意外と真実に近いシステムなのじゃないか、と心密かに思っている。