Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

お節介なアメリカ


アメリカの工学者にして、政府批判で有名なノーム・チョムスキーの著書。本書は、ニューヨーク・タイムスに掲載された記事をあつめたもの。
私などは「ニューヨーク・タイムス」と聞くだけでニヤニヤしてしまうのだが、悪擦れしたイケナイ態度だな(苦笑)。

チョムスキーの政府批判は
アメリカの唱える民主主義と正義は、相手国に親米政権を樹立するためだけのものだ。
アメリカ自身が、テロ国家である。
・国連の方針に沿わないアメリカ政府は、全然民主主義でない。
・中東において、テロリストを作り出しているのがアメリカだ。アメリカに、911に報復する権利などない。
・中東の不安定要因の最大はイスラエルであり、イスラエルを支援するアメリカこそ諸悪の根源
というもの。
よくある批判とも言えるし、一理あるとも言える。

しょせんNYタイムスだなと思うのは、これらの批判に対して、著者が主張する「国連に従う解決」が、本当に有効だと思えないことである。

チョムスキーの理論によれば、たとえば日本人が拉致されたのも、金成日政権を批判する米国が悪い、北朝鮮に支援すれば「自然に」北の政権は「民衆の力によって」崩壊するのだ、という。
残念だが、限りなくアタマの中がお花畑だと思わざるを得ない。
911テロに関する批判もそうなのであるが、つまり「911に対してアメリカは報復する権利などない」というとき、911の被害者のことは彼方に追いやられている。
もしもそこに家族がいれば、残念ながら理不尽なテロに対して、人は復讐を考えてしまうと思う。その復讐を国家が禁じる。何故に、そのようなことが可能なのか?
もしも「平和」というのがその回答だとすれば、「全世界がアメリカの言うことを聞く平和」と、それ自体は等価である。
すなわち、チョムスキーは一見、アメリカの専横を批判するように見えるが、実は個人の生活にはなんら関心を抱かない国家主義者であると言われても仕方がない。

さらに指摘する。
チョムスキーの理論にそって考えるならば、アメリカがかつて行った「太平洋戦争」は、まさにその通りの代物ではないのか?
しかし、チョムスキーは、その「民主主義の押しつけ」で「親米政権を樹立」するための「暴力」は肯定する。日本はファシストだったからだという。

今、アメリカがイスラエルを支援しているのは事実だ。しかしながら「なぜ、そうなのか」に彼は一切言及しない。
まかり間違っても、今のアメリカのメディア産業、金融業を牛耳っているのがユダヤ系であり、そのためにアメリカ政権がイスラエルを支援せざるを得ない、という指摘は出来ない。
なぜか?それを言えば、その主張はヒトラーと変わるところがないからだ。
かくて、実は国家社会主義の支持者であるチョムスキーの正体がばれてしまうからだ。
真実は、言わないところに隠される。

評価は☆。国家が個人に優越して物事を解決するという主張は、いかなる立場でも民主主義でなく、国家主義ではないのかね?
「数年に一度、投票レバーを回して投票すれば世の中が変わるとは信じられない」のであれば、何によって君の望むように世の中を変えるつもりかね?


最近だが、「スカートの風」で有名な呉善花女史が、母上が亡くなられた葬儀のために、済州島に里帰りしようとしたら、韓国政府によって入国を拒否された。「国家利益に反する言動をしているから」だそうだ。
呉女史は、日本に帰化しているため、日本大使館が交渉し、ようやく「人道上の配慮で」入国が認められたことがあった。
日本は、いかに反日発言をしても、そのようなことはない。もちろん、アメリカもない。
チョムスキー氏が存在できること自体、まだアメリカがかつてのソ連などよりはマシな国だという証拠である。
つまり、こういう本でも出版できるからね。

そういう意味では、たとえば「反日」日本人というのは、「いかに日本が素晴らしい国か」を証明してくれている、とも言えるわけだ。
良い国とは、そんなものじゃないかと思うのだなあ。