Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

税とグローバル経済

私は基本的に「増税なき財政再建」論者である。ここで消費税を上げるには人工的なスタグフレーションを呼び込む危険が高いように思われるし、だいたい無責任きわまりない官僚どもが好き勝手に金を使って増税はないだろうと思うのである。

だからといって、どっかの時代錯誤な党首のように「軍事費を削減、あとは大企業に課税すれば良い」とは思わない。軍事についていえば、GDPは当然だが、予算規模そのものだって英国と同規模。日本と英国の置かれた国際環境と人口、GDPまで含めて考えた場合に「日本は軍事大国」だとはとてもいえない。だいたい、予算の過半は正面装備費ではなくて人件費。自衛隊員を失業者の群れにして、また「格差社会」を拡大するような政策をなぜ推奨するのかね(笑)

ま、それはさておいて。

その「大企業に課税すれば良い」は本当だろうか?

実は、11年前に気づいたことで「日本は企業にとって不利だ」ということがある。「これじゃあ、社会主義国ではないか」と思ったのだ。それは、税制面での違いである。

例を挙げて説明する。
日本の甲株式会社が今年度に1億の純利益を計上したとする。すると、まず税引き前利益で、だいたい50%の課税率で5000万円を国庫に納める。残り5000万円を、株主と経営者が1/3づつとり(配当性向33%となって、まずまずの水準)残りを社内留保として、将来に備えるとしよう。
よって、株主が受け取れるのが1650万円、経営者も同様、内部留保も1650万円である。
株主と経営者は、それぞれ1650万円の所得を得たわけで、これに対して所得税を払う。税率は最高であるので、やっぱり50%として825万円を支払い、残り825万円が手のこりである。

同じ1億の純利益をあげるアルファカンパニーが、米国にあるとする。すると、まず1億円の利益を分配する。3300万円が株主、3300万円が経営者、3300万円が内部留保である。
すると、株主と経営者は、それぞれ3300万円の報酬に対して所得税を払う。税率50%として1650万円である。残り1650万円が彼らの収入である。法人税は、3300万円の内部留保に対して課せられる。これも50%として、1650万円であるから、内部留保が残りの1650万円となる。

さて、日本の甲株式会社とアルファカンパニーを比較するとどうであろうか?
双方とも、1億円の利益に対して1650万円の内部留保が残ったわけである。しかしながら、株主および経営者の収入は半減している。日本の税制では、利益分配する以前の総額に対して課税するからである。諸外国で、このような税制をとる国は少ない。「利益配分する以前の利益総額に対して課税し、利益配分後の個人収入に対しても課税するのは二重課税であるから」というのがその理由である。
日本の税務当局は、「そういう見解はとらない」というだけである。

これは、株主の立場になって考えてみると「本社が日本にあるだけで、配当の期待が半減」という仕組みである。アジア投資が中国、香港に集中する一つの理由である。
簡単にいえば「表面税率」ではなくて、利益に対する税負担「実効税率」において、日本はひどく不利なのである。だから、諸外国から日本に対する投資は活発ではない。
それゆえ、日本企業は設備投資を、自己資金および邦銀による間接金融に依存するという体質であった。閉じた世界で金融調達をしてきたのだ。

一方で、このような税制では、利益配分するよりも、経費を使って利益を減らしたほうがずいぶん有利になってしまうことに気づく。中小企業のオヤジも含めて、みんなが領収書をもらう社用族社会のできるゆえんである。個人でいかに収入が多くても、経費を使えなければうまみが少ない。
だから、自己の才覚で一発をねらうよりも、会社で領収書を切れる立場になる方が遙かに優雅な生活が送れることになってしまうのだ。

しかし、もう時代は変わったのである。独立心のない、組織依存の人間ばかりを量産し、個人の能力よりも会社の肩書きが尊重される世界で、外国から資金も集まらない。頼みの間接金融(銀行)は、世界のルールが変わったのでガタガタである。

世界のルールに従わないと生きていけないのだから、仕方がない。しかし、我々日本人自身は、果たして変わったのか。まったく旧態依然として、あげくに未だに「小泉改革」以前の懐かしき時代に戻れると勘違いしてばかりいるではないか。
その上、調子にのって「格差是正」のかけ声のもと、またぞろ復活してきた官僚勢力の前に、特殊法人ひとつ解体できないでいる。いまさら、何をという感じである。

だからねえ。。。東証のいわゆる「外国人投資家」は、実は3割か4割、あるいはそれ以上、実態は「日本人の海外法人」だと言われているんですよ。。。だって、本当の外国人投資家なら「生産の過半を海外で行い、利益のほとんどを輸出であげて、なぜ本社を日本におく利益があるのか?投資家の利益をどう考えているのか?」と追求したっておかしくはないんだから。

本社スタッフが日本人だから、という理由だけで日本本社になっていて、それで税金を日本に納めている、それが「史上最高益」をあげた日本企業群の実態なんである。
「大企業から金を取れ」という主張をする時代錯誤の政党と、それに乗っかる木っ端役人どもがいかに「国粋主義」であるか、私が指摘するまでもない話なのである。

*ちなみに、彼らが称揚する北欧のスウェーデンノルウェーも、企業の海外移転問題で税制を変えて、企業有利に改めた。本社がなくなっては、収入そのものがなくなり、福祉もくそもないのは言うまでもない。

*同様の事件はかつて独禁法違反に問われたマイクロソフトで起きた。ゲイツ会長は、本社があるシアトルの川を渡り、対岸のカナダ領を視察した。カナダがマイクロソフトを誘致していたのである。たちまち米国の裁判所が独禁法違反を棚上げにしたのは言うまでもない。裁判官も、自分たちの給料が減るのはイヤだったらしい。