Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

北朝鮮VSアメリカ

北朝鮮VSアメリカ」原田武夫。

著者は、元外務官僚です。
米朝対話から6カ国協議、そして現在の米朝再接近までをドル防衛の視点から分析(のように見えること)をした本です。
本書の主張は
1.高精度の偽ドル札「スーパーノート」を偽造したのは、北朝鮮ではなく米国自身である。北朝鮮が偽札をつくっているというのは「カバード・アクション」(機密情報活動)である。
2.米国と欧州の間には、北朝鮮の資源開発利権をめぐっての闘争がある。
3.日本は米国に裏切られ、制裁も効果無く、すべてのカードを切った状態で無力である。
4.局面打開のためには、いずれ北と合併する韓国と共同歩調をとるのが得策である。

となります。

うーん。。。正直「と本」のニオイもしますな(苦笑)

まず、米国自身が偽札を作っている、というのが「機密活動」としてあり得るかどうか。
たとえば、日本政府自身が、なんらかの意図をもって日本円の偽札を作ったとします。それが、もしもばれたら、円の価値は大暴落、、、どころか、国際市場から退場間違いありません。つまり、文字通り亡国であります。
それを考えると、政府自身が自国の通貨を偽造するのは「リスクと利益」のバランスが悪すぎます。投資として、成立しない賭けだと思いますね。
この点に関して、たとえば「米国政府中枢がネオコンだから」というのは、あまりにも説明としては無理じゃないでしょうか。

それから、動機である北朝鮮の資源開発についてですが。
人口衛星による探査で、鉱脈らしきものは見つかるというのと、実際に資源が開発できる(お金になる)というのは、まったく別次元の問題です。
たとえば、北朝鮮と親しい中国やロシアは、なぜとっとと北朝鮮に資金をぶちこみ、資源開発しないのでしょうか?どう考えても、アメリカが手を出すよりも、遙かに簡単に実現できるはずで、未だにやっていない理由が不明です。
そして、欧州(ドイツ)がことに、北朝鮮の地下資源に手を伸ばす(それも、米国と水面下で激しく対立してまで)も分かりません。欧州は、地下資源としてはロシアとアフリカの両地域から市場を通じて、かなり自由に資源を入手できます。わざわざコスト的にも地理的にも不利な極東の赤い独裁国に、もって回った工作をしてまで利権を欲しがる物でしょうか?

そういう素朴な疑問が、本書を読んでいると次から次へと浮かんできます。おもわず「と本か?!」と思ってしまうわけです。

その上、とどのつまりが「韓国と協調」って、つまりは「経済支援をしろ」です。国民の税金をぶちこめ、ということです。なんだかくさいなあ、と思うのですね。

というわけで。評価はナシ。
「と本」マニアの人には、是非とも一読願って、判断を仰ぎたいところではあります。

で、最後に思いつきました。
本書の著者は「北朝鮮が米ドルを偽造している」という指摘をした著書について「通常、新聞や雑誌が使われる」インテリジェンス活動においては例外的な例だが「カバード・インテリジェンス」ではないか、と指摘します。
絶対に真相が漏れてはならない諜報活動であって、我々が真実を知ることはできないというわけです。
で、その理屈は、実は本書自身にピッタリと当てはまります。
ですから、私が言いたいのは「この本は、実はカバード・インテリジェンス」ではないか、ということです。
それでは、誰のためのインテリジェンス(諜報活動)なのでしょうか?

それは、この本が誘導しようとしている方向に世論が動くことによって、得をする人々(または国家)に他なりません。

だって、この本自体に、ちゃんとそういうロジックが書いてあるんですもん(笑)