Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

経営がへたくそ

経営学で、ある有名な工場の話があります。
その工場は、生産性の向上に励み、毎年毎年の数値計画を達成していました。
ところが、ある年、あっさりとつぶれてしまいました。営々と積み上げてきた利益も、あっという間に吹きとびました。
なぜかと言うに。
その工場の製品を買っていた、ある自動車メーカーが「これからは、この工場ではなく、もっとコストの安い海外の工場から製品を買う」と決めたからです。
その工場は、その自動車メーカー1社しか、取引先をもっていなかったのです。売り上げがなくなり、工場はつぶれました。

この教訓は、いろいろなことを教えてくれます。
まず「毎年毎年の利益計画を達成することが、企業の存続と発展を保証してくれるわけではない」というのがあります。なにしろ、いったん赤字が出るときは、それこそ5年10年貯めてきた内部留保があっという間に失われます。(これには税制も影響しています)
それから「卵は同じ駕篭に盛るな」もあります。もしも駕篭が落ちたときに、一つの駕篭にすべて卵を盛ってたら、卵は皆割れてしまいます。卵を分けておけば、全滅は回避できます。

この事例の工場経営者は、ただ毎年の利益を出すのではなく、その資金で営業部隊を雇い、あるいは自らトップセールスを行って、取引先の数を増やすべきでした。「正しい経営戦略」がなかったことが、この工場の倒産した原因だと言えます。決して「グローバリズムのせい」ではありません。そう考えるのは評論家の仕事で、経営者は工場の存続のために努力をするべきでした。

さて。
今回の毒餃子事件でも、似たようなことが言えるのではないでしょうか?
つまり、「中国で生産することが尤も利益に貢献する」として、中国に1国集中で生産拠点を移してしまえば、もしも事故を起こして「チャイナフリー」運動でも起きたら、覿面に業績は急降下してしまいます。
経営者は「毎年毎年の利益計画を達成すればいい」のではありません。そもそも、企業の会計年度が1年であること自体に、深い意味があるわけではないのです。(実際に、林業会社があったとして、単年度の損益に何か意味があるでしょうか?)
優れた会社経営者は、リスク管理も含めて会社経営を考えなくてはいけません。卵を中国という1つの駕篭に盛った経営判断が間違いである、ただそれだけのことなのです。

もっとも、この食品会社の経営者が、大した野心家ではない場合、このような判断をしない可能性があります。
つまり、長く社長職にあって権力を掌握したい場合は、中長期的な視野を持つかもしれませんが、サラリーマン社長が今年で任期切れだとすると、そこそこ利益を出してさっさと退職金をもらって悠々自適だと考えるかもしれないからです。もしそうなら、そういう経営者は、正しい経営判断を怠けるでしょう。
してみると、社長に対して美人秘書をあてがい、社用車を使わせて良い気分を味あわせるのも、会社の経営戦略上は必要なことなのかもしれませんね。

とにかく、欲望のない人は、経営については困るわけです。まあ、そういう人は社長にならないものだとは思いますが。

ちょっとこの問題を巡る記事をみていたら、「90年代の規制緩和が間違いだ」という主張がぽろぽろあるようなので、思わずこんな記事を書きました。
経営者の経営がへたくそなのは、市場原理とは関係ないし、むしろそんな経営者には早く退場願うという意味では、市場原理のほうが正しいかもしれないわけですから。