Single40'S diary

「40過ぎて独身で」と言ってる間にはや還暦のブログ

おききあるべく

世間では、派遣切りが横行しているようだ。
もっとも、企業サイドの言い分で考えれば、こんな時のために派遣会社にお足を払っているんだ、正規雇用の社員を先に減らすわけにいかんではないか、という本音もかいま見える。
人件費を圧縮しなければ、生き残っていけない会社も多いだろうし、大幅減益の上場企業は死活問題になる。株価が低迷すれば、資金調達がとたんに難しくなるからである。
資金繰りの苦しさというのは、経験すればわかるが、まさに塗炭の苦しみである。

非上場企業の場合はどうか。
日本の金融機関は、まず代表者の自宅を抵当にとる。だから、会社がつぶれれば、解雇された派遣社員同様、奈落のそこでダンボール生活になりかねない。
さらに、経営サイドだから、雇用保険もない。明日から、無収入のルンペンになるほかないのである。非情の決断をせざるを得ない状況がそこにあるのである。

上場企業の場合はどうか。
彼らは、オーナーではなくて、サラリーマンの親玉である。株主の顔色を伺って、苦節ウン十年でその地位に上り詰めたワケだ。
会社は株主様のもの、といいつつ、あっさりと人件費削減をするのだ。
たしかに、利益を出せなければ、株主総会でつるしあげられ、下手をすると失業者の仲間入りである。

リストラをする経営者が、責任といつつ、報酬返上するのはどうかと思う。あれこそ、サルでもできる反省ポーズだろう。
もともと、多額の報酬を得ているのだ。「3ヶ月間、報酬の30%を返上」しても、そりゃあ余裕で生活できるのである。
解雇された社員には、失業保険のほか、何もなくなる。経営陣は生き残るのである。

私は思うのだが。
人を解雇する以上、自分も辞めるのがスジだろう。
「そうはいっても、余人をもって換えがたく」「全力で会社を再建するのが私の役目」うそをつけ、と思うのだな。
再建などという難事をやってのけるだけの力量があれば、そうそう簡単に赤字転落とかしないものだが。現実は厳しかったというわけだ。
だめだった人間よりも、まだ未経験者にやらせたほうが可能性があるんじゃないかね?

とっくの昔に減量せざるを得なかったはずのところ「経営責任が」といいつつ手を打たず、この期に及んでリストラ。
やらねば「全社員失業」の羽目に陥るので、その決断自体は当然だろう、と述べたら、お前は経営責任をどう考えるのか、と社長がのたまう。
もちろん、だから辞めるわけだ。当然ではないか。

もっとも、やめると言ったら、あちこちから勧誘が来て、なんだか妙な具合になってしまった。かえって格好が悪くて仕方がない。似合わないことをしたからなあ。

で、報酬をいくばくか返上して「つらい決断」をした社長は生き残る。
そう、そういうことを可笑しいとも思わぬから、社長になっているわけですな。
世の中、そんなもんである。

私の故郷の戦国武将は、篭城のすえ開城するときに「自分が腹を切るから、城兵の命を助けてほしい」と嘆願し、その必要はないと秀吉が言ったにもかかわらず切腹して果てた。
家族に宛てた最後の手紙は「物語、おききあるべく候」であった。
そのような封建主義の遺風は、もう流行らないわけである。なにしろ、みんな平等の世の中ですからね(笑)